北海の「鱈 (タラ)」:食べ過ぎ、捕り過ぎ、棄て過ぎで危機的状態! (BBC-News, June 28, 2019)
London市内を流れる「River Thames (テムズ川)」。その北側の岸辺に殺風景な「Tower of London (ロンドン塔)」が建つ。ここは、歴史的な要塞にして武器・宝物(ほうもつ)の保管庫であり、堅固な牢獄、処刑場でもあった。
ロンドン塔は、「怖いもの見たさ」の観光客を引きつける。
今は、道路端でUKのFirst Foodsの代表格「Fish & Chips (フィッシュ・アンド・チップス)」が売られ、過去の暗い、血みどろの歴史が払拭されている。
この地、この場所で、1305年8月23日、Scotlandの独立を願って立ち上がったScotlandの英雄「William Wallace (ウイリアム・ウォレス)」は、35歳にして、文字通り、八つ裂きにされた。手足を切り刻まれ、胸をえぐられて心臓が取り出され、辱(はずかし)めを受けて首を切られた。当時のEngland王「Edward I (エドワード1世)」の怒りは、それでも収まらず、その首を串刺しにして「晒首 (さらしくび)」にした。
それは、どんな悪魔さえ、目を背(そむ)けたくなるような殺戮 (さつりく)だった。これが、「キリスト教徒を自認し、十字架の前に跪 (ひざまづ)いて、神に祈りを捧げる人間の所行か」、と疑いたくなるほど残酷極まりないものだった。しかも、この冷酷な処刑は、Adam Smith (アダム・スミス)の時代、USの独立宣言(1776年)後も続き、ようやく廃止になったのは1790年だった。過去の一部のノルマン系 England人は、騎士道も人間愛もかなぐり捨てた、畢竟 (ひっきょう)、残忍な民族と言わざるを得ない。
その後、産業革命が起こり、England人が口にした「Fish & Chips」のFish は白身のタラのフライだ。何という皮肉か。そのほとんどはScotland沖の「North Sea (北海)」で捕れた「Atlantic cod (太西洋鱈(タラ))」だった。
しかし、獰猛(どうもう)、強欲、残忍非道な人間は、寄ってたかって「タラ」を捕り放題にまかせて捕りまくった。しかも、あくどいことに、トロール網で稚魚・成魚の「見境なし (indiscriminately)」に、根こそぎ「demersal fish (底生魚)」を掠(さら)い、「Total allowable Catch (漁獲量制限)」が定められると、今度は、高値で売れるものだけを水揚げし、残りは海に棄てた。
とんなに漁業資源が豊かな海でも、これでは、直ぐに「crying sea of shame (恥ずかしい思いをさせられて、海が泣いている)」状態になる。
あれほど海に溢れていた「cod stocks (タラ資源)」も1970年代から、衰退が目立ちはじめ、2007年になると海は崩壊し、「The International Council for the Exploration of the Sea(海洋探査国際委員会Ices)」の調査によると、現在は「harvested unsustainably (持続可能な漁業ができない)」レベル。
このため、Icesは、今年のタラの漁獲量を、昨年の65%減の10,457トンと勧告する。 しかし、問題は「有言実行」。漁民に海洋資源や漁獲ルールを守る気概と経済的な余裕があるのかが問われよう。これまで、どの国でも、どんなルールでも、まともに守られたことがなかったからだ。
おわりに:「Fish & Chips」の Fishがタラ以外の魚肉に変わる日は、すぐ目の前に迫っている。これを自業自得(じごうじとく)という。
(写真は添付のBBC Newsから引用)