末期の前立腺ガンが消えた!:ペンブロリズマブの威力 (BBC-Health, June 2, 2018)
一旦、体の中にガン腫瘍 (tumour)ができると、これがまたしつこい。どこで、どう学んだのか知れないが、免疫システムを狂わして生き延びる術(すべ)を心得ている。
ガン腫瘍が PD-L1と呼ばれるタンパク質をつくり出し、ヒトの体の免疫システムのスイッチをオフにして、その攻撃を躱(かわ)すというのだ。つまり、殺人犯が警察に銃を向けられても、玉が発射できないように、その銃を改造してしまうようなもの。これでは、さすがの免疫システムも手も足も出せなくなる。
したがって、ガン治療には、そのガン腫瘍の武器「PD-L1」を取り上げてしまえばいい。「ペンブロリズマブ (pembrolizumab)」は、そのような考え方に基づいて開発された「免疫療法薬 (immunotherapy drug)」だ。
「The Institute of Cancer Research (英ガン研究所)」の Johann de Bono教授らの研究グループは、臨床試験の一環として、末期の「前立腺ガン (prostate cancer)」患者 258人に対し、この薬を投与したところ、被験者の約 10% - 15%の患者に目を見張るような劇的な治療効果が得られたという。なお、研究の詳細は「The American Society of Clinical Oncology」の年次総会にて発表された。
Mr Michael English (72歳)も、その薬の恩恵を受けた 1人。Mr Englishは2005年に前立腺ガンを発症し、それ以来10年以上にわたって、放射線治療、化学療法、ホルモン療法を繰り返し受けたが、ガン腫瘍を根治することはできなかった。それが、臨床試験に参加し、2年前に「pembrolizumab (ペンブロリズマブ)」の投与を受けた。すると、前立腺ガンの腫瘍は、跡形もなく消え失せたのだ。
これで、この免疫療法薬に、前立腺ガンを叩きのめす力があることが証明された。
ただし、なぜ、この免疫療法薬が、特定の患者に対してのみ劇的な治療効果を見せるのかは不明。それを明らかにするのか、次の研究目標という。
(写真は添付のBBC Newsから引用)