鎮痛剤オピオイド:使い方を間違えて依存症、死亡事故多発! (BBC-Health, July 22, 2018)
膝・腰が痛い、あるいは頭が痛いなどは誰でも経験すること。しかし、心臓病やガン患者の痛みは、相当なものだと聞く。進行性ガン (advanced cancers)の 30 - 94%は、激痛に襲われ、終末期患者の半数以上は、人生最後の 3ヶ月を「opioid (オピオイド)」の世話になる。
「opioid」とは、「(opium poppy (ケシ)」の液汁からつくられる「opium (アヘン)」によく似た効果があることから名付けられた合成化合物。オピオイド系鎮痛剤とも言い、「morphine (モルフィネ)」、「tramadol (トラマドール)」、「fentanyl (フェンタニル)」、 「codeine (コデイン)」、「methadone (メサドン)」、「heroin (ヘロイン)」などを総称するグループ名でもある。
「opium (アヘン)」がそうであるように、「morphine」、「heroin」などは、いずれも医薬品であるが、麻薬でもある。なお、ケシはシュメール人(Sumerians)によってBC4000頃にはすでに栽培されていたという。
オピオイドの鎮痛作用は、強烈だ。なにしろ、脳神経の「痛覚 (sensation of pain)」に直接作用する。しかし、「オピオイド受容体 (opioid receptors)」は呼吸を司る部位にあり、オピオイドの投与量が多過ぎると、呼吸困難になって、死因につながることも少ないない。オピオイドの「さじ加減」は微妙なのだ。
それに、麻薬の側面をもつからには、麻薬依存症(中毒)を引き起こす。USでは、慢性痛に苦しむ患者に対して、医者がオピオイド系鎮痛剤を処方し過ぎたこともあり、2016年のオピオイド(麻薬)乱用者は 1,150万人、その過剰摂取による死亡者は 42,249人であった。
また、2017年、UKの病院で処方されたオピオイドは、2,380万件。10年前に比べて74%増だった。その他にも労働人口の間に、「モグリ (闇取引き)」のオピオイド乱用者が、推定200万人以上はいるものと考えられている。なおUKでも、オピオイド過剰摂取による死亡者は、2016年に2,000人を越えた。
様々なオピオイド系鎮痛剤は医療現場で広く使用されているが、その鎮痛メカニズムには不明な点も多く、長期的な薬剤効果も十分に解明されていない。したがって、オピオイド系鎮痛剤の処方に当たっては、慎重さが要求される。
たとえば、化学療法によって脳神経がダメージを受けたガン患者は、強い痛みを訴える。このとき、直ちにオピオイドを投与せずに、まず「paracetamol (パラセタモール)」、「tricyclic antidepressant (三環系抗うつ薬)」で治療し、それでも痛みがとれないときに、オピオイドを使用するのが望ましいという。(これほど親切な医者が近くにいるとは思えないが。)
結論:あたりまえのことだが、痛いのに、痛くないと体に錯覚させるのは、命がけ。
いくら、適切に処方すれば、オピオイドは安全とは言え、人類が完全に理解していない薬。まるで、安全性に疑問が残るのに、しかたがないと思わせ、あるいは一部の人の利権のために運転している「原子力発電」のようなものだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)