薬を飲み続けると:認知症になることも! (BBC-Health, April 26, 2018)
あちらを立てれば、こちらが立たず。世の中のことには、良い面もあれば、悪い面もあることが多い。「痛し、痒し」とも言われる。薬はまさに、その代表格のようなものだ。
East Anglia大学の Chris Fox教授らの研究チームは、65歳以上の認知症患者40,770人の、20年間に及ぶカルテならびに処方記録 2,700万件を精査した結果、「抗コリン薬(antichokinergics)」の中でも「抗うつ薬 (antidepressants)」として処方されることの多い、
・amitriptyline (アミトリプチリン)」 [商品名;Tryptanol (トリプタノール]
・paroxetine (パロキセチン)」 [商品名:Paxil (パキシル]
などを 4年から 20年間飲み続けた患者には、認知症の発症リスクが高くなる傾向があることを明らかにした。(研究の詳細は医学雑誌「The British Medical Journal」に発表。)
うつ病 (depression)に限らず、「抗コリン薬 (antichokinergics)」は、Parkinson's (パーキンソン病)や bladder problems (膀胱障害)などの治療にも処方される。
Fox教授らは、臨床医に対し「de-prescribing」を呼びかけ、できるだけ「抗コリン薬」の処方を控えるようにと、提言する。
しかし、Fox教授らの研究結果については、専門家の間でも意見が分かれる。
この研究では、抗コリン薬がなぜ認知症を引き起こすのか、その発症メカニズムあるいは「因果関係 (causation)」が明確に示されていないこと。また、抗コリン薬の長期間の服用によって認知症の発症リスクが高まると言っても、「unhealthy lifestyle (不健康な生活スタイル)」を続けたときのリスクに比べたら、小さいものとの声もある。
それに、病気は薬を飲まないと治らないのも事実。要は、良い面と悪い面のバランスを見極めて、薬を飲むしかなさそうだ。
ただし、一般に、薬は飲み過ぎの傾向にある。数ヶ所の病院の医者に言われるままに、何種類も薬を飲み続けて、体調を崩した人も少なくない。
結論:発症リスクの大小にかかわらず、薬の服用が認知症を引き起こすリスクがあるならば、医者はそれをきちんと文書にて患者に説明する必要があろう。
なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。
・The Guardian, April 25, 2018
[Some antidepressants linked to dementia risk]