乾燥に強いサボテン:人間の欲に弱い (BBC-Science & Environment, October 5, 2015)
「仙人掌」はサボテンと読む。その「サボン」はポルトガル語「sabão(サボン)」、「テ」は手の意味だ。つまり、「石けんの手」が訛ってサボテンとなった。日本には江戸時代に観賞用として渡来したとされる。なぜ、サボテンが石けんか。それは、石けん(しゃぼん) の代用として、切り口で手についた油を抜き取ったからであり、「テ(手)」は、サボテンの形からの連想。
英語の「cactus」はギリシャ語「kaktos」に由来する。この植物の名は、本来「kind of pricky plant(とげのある植物)」の意味で、古代のギリシャやローマで食用とされた「カルドン (cardoon)」を指した。原題の「cacti」は、「cactus」の複数形。
なお、1900年代、イギリス、ハンガリーなどの一部の国では、サボテンを家の中に持ち込むのは不吉とされた。
さて、こともあろうに、そのサボテンの仲間が世界中で危機にさらされている。
科学雑誌「Natural Plants」に「国際自然保護連合(The International Union for Conservation of Nature, IUCN)」の研究調査結果が発表された。
その研究報告によると、サボテン科に属する1,480種の31%が「人間の活動 (human activity)」によって生存が追い詰められているという。具体的には、「違法取引 (illegal trade)」、生態系を破壊する「農業 (agriculture)」、サボテンをエサに混ぜる「水産養殖(aquaculture)」、荒れ地の「土地利用開発 (land-use change)」などが主な原因だ。
さらに、サボテンが無計画に採取 (unsustainable harvesting)される一方で、園芸産業、個人収集家の双方に向けた鉢物・種子の違法取引が横行し、「絶滅危惧種(threatened species)」のサボテンの41%は深刻な事態に陥っている。
"Thriving in landscapes where very little vegetation can survive in the intense heat or drought conditions, the cactus group plays a pivotal role in sustaining arid ecosystems.
Among the species that use cacti as sources of food and water are deer, coyotes, lizards and tortoises. The animals, in turn, help distribute the plants' seeds."
"They are also very slow-growing species so this makes them particularly vulnerable to disturbance."
[ サボテンは、強烈な日射と極度の乾燥のため、ほとんどの植物が生き残れないような地表でも生育し、乾燥生態系の維持に、極めて重要な役割を果たしている。
シカ、コヨーテ、トカゲ、カメにとって、サボテンは食糧と水の供給源であり、また、逆に、それらの動物はサボテンの種子をばらまいて、互いに支え合っているのだ。]
[ サボテンの生長は、(他の植物に比べて)極端に遅い。このことが、生育環境の「擾乱」に極めて脆弱で傷つきやすい理由となっている。]
報告によると、早急な対策が求められているのは、サボテンの違法取引。許可を得て正式に国際市場で取引きされる商品サボテンはごく一部で、その多くは地方市場で違法に取引されているのが現実とか。
苛酷な環境を生き抜くことができるように進化したサボテン。今また、違った進化が求められているようだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)