野に放たれた「虎のしっぽ」:イギリスの煉瓦も壊す (BBC-News, July 23, 2016)
雑草はしたたかだ。その生命力は桁外れに強い。コンクリートやアスファルトに開いた、ほんのわずかの隙間から芽を出し、茎を伸ばし、花を付ける。ヨモギ、タンポポ、待宵草にススキ、それに大根だって舗道に生えることがある。
中でも、春、雪解けを待っていたかのように、真っ先に草むらや川辺に、ニョキニョキと新芽を出すのは、イタドリだ。日本では、その新芽を摘んで、山菜として食べる。また、イタドリの若葉は、その昔、血止めとして使われ、痛みがとれることから、「痛みとり」と呼ばれた。それが訛って「イタドリ」となったという。さらに、茎の文様が「虎の尾」に似ると見た古人は、漢字で「虎杖 (イタドリ)」とも書いた。
さて、1800年代の初期、来日したイギリス人は、なぜか、この「イタドリ (Japanese knotweed)」、学名「Fallopia japonica」に魅せられた。悲劇は、ここに始まる。
"It was introduced by the Victorians for horticulture, its 3-4m (10-13ft) stems, ornamental leaves and clusters of white flowers made it an attractive option for gardens."
[ イタドリは、ビクトリア時代に園芸種としてイギリスに持ち込まれた。茎丈3 - 4 m に生長し、装飾的な葉っぱに、茎先にビッシリと付けた白い花は、庭に彩(いろど)りを添えた。]
ところが、イギリスにはイタドリの「天敵 (natural predator)」として知られる「Aphalara itadori (イタドリマダラキジラミ)」がいない。それに、これを山菜・薬草として利用する人は誰もいない。
イタドリは、やがて園芸家の庭から逃れると、野に出て暴れまくった。Walesの草原に、その姿を現わしたのが1880年頃。現在は、イギリス中の自然を荒らしまくり、手に負えない状況となった。「世界最悪の侵略種 (The world's worst invasive species)」の 1つとして、指名手配されるほどの、「お尋ねもの」。
その罪状によると、「植物生物多様性 (plant biodiversity)」の破壊はもちろんのこと、頑強な根はどこにでも侵入し、建物の基礎部のコンクリートや煉瓦積、洪水防止堤(flood defences) まで壊してしまう。
イタドリに占拠された不動産は、大幅に値下がりし、住民は戸惑いを隠せない。
2015年、ついにイギリス政府は、全国的な規模の、外来種イタドリ撲滅プログラムに着手することを決定した。その経費は、なんと 15 億ポンド (約2,100億円)。
手始めに、Wakes 南部 Cardiff 近傍の村 Taff's Well の原野で、イタドリの天敵のキジラミ (psyllid) を使って、その繁殖の抑制効果を確認する計画だ。
さて、そのキジラミ君たち。このところ、にわかに騒々しくなったイギリスで、うまく仕事をこなせるだろか。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)