環境のバロメータ生物:「海の のろま」とは? (BBC-News, May 15, 2023)
日中は庭のすみやプランターの底に隠れている。そして、夜になると、のろのろと現われて、キャベツや白菜などの野菜をかじる。これに塩を振り掛けると、小さく縮まる気味の悪いものと言えば、子どもでも知っている。それは園芸家の敵のナメクジ (slugs)だ。
しかし、「slug」の前に「sea」が付いて「sea slug (ウミウシ)」となると、その姿は一変する。その仲間には、海の中でひときわ目立って美しいものが多い。
奇妙な「変化」は、その形だけではない。「slug (ナメクジ)」の語源が風変わりなのだ。
そもそも、イギリスでは、産業革命以前(1760年頃)にナメクジを「slug」とは呼ばなかった。(では、どのように呼んでいたのかは不明。)
文献に「slug (ナメクジ)」の記載が、初めて登場するのは1704年。つまり、「Kingdam of England」が「Kingdam of Scotland」を征服し、これを併合して「The United Kingdom of Great Britain」と名乗った、記念すべき年の1707年に先立つこと、ほんの 3年前に過ぎない。
それまで、「slug」と言えば、もっぱら「slow-moving lazy person (のろまで怠けもの)」のことを指した。そして、「slug」の語源をたどると、スカンジナビア方言にたどりつく。したがって、この「slug」は、バイキングによって Britain島にもたらされたことは、ほぼ間違いない。バイキングは船上でグズでのろまな男を「slug」と、ののしっていたはずだ。産業革命の間に、「slug」が人から生物の名称に変わったのだ。
その産業革命は地球温暖化をもたらし、世界全体が気候変動に脅かされるようになった。
イングランド西南端 Cornwall Peninsula(コーンウォール半島)海域の水温が上昇し、その海岸 Falmouth (ファルマス)の「rock pool (潮溜まり)」で、珍しい「 raibow sea slug (虹ウミウシ)」が発見されるようになったという。学名は「Bakakina anadoni (ババキナ・アナドニ)」、「aeolid hudibranch family (オオミノウミウシ上科)」に属する生物だ。優雅で鮮やかな衣をまとってはいるが、肉食で好気性のウミウシとして知られている。
通常はイベリア半島やフランスの西海岸などの「暖かい海域」に生息している。この生物が、イギリスの海域で見つかったということは、「massibe changes in sealife (海洋の生態系に大きな変化)」が生じている証拠だ。
なお、ウミウシは濁って汚れた海では住めない。
子どもの頃、海岸近くの浅瀬や岩場では海藻が揺れ、魚が泳ぎ回っていた。海の水は透き通っていて、たくさんのウミウシやイワガニが そこかしこで見つけられたものだった。
おわりに:「Grimms Märchen」の「Vom Fischer un syner Fru」英語訳「The Fisherman and His Wife (漁師とその妻)」には、人間の欲望、心の醜さと海の汚れとの関係が、みごとに表現されている。ぜひ一読されたし。
(写真は添付のBBCR Newsから引用)