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宇宙の神秘:時間、空間、質量・エネルギーとは、いったい何ものか? (BBC-News, Apr 12, 2023)

ACT map covers one quarter of the sky

 「時間」、そして「空間」さえ、138億年前までは、なにも存在しなかった。それでは、それ以前に、なにがあったのか。それは、誰にもわからない。ある瞬間に突如として、ビッグバンが起こって宇宙が誕生したと言えるくらいだ。

 

 その爆発から約37万年後、灼熱の宇宙は冷えて落ち着きを取り戻す。これが「Clean up of the Universe (宇宙の晴れ上がり)」と呼ばれる状態だ。この時点で「Cosmic Microwave Background (宇宙マイクロ波背景放射CMB)」が宇宙全体に伝搬する。天文学者は、これをビッグバンの衝撃波と捉える。

 

 さて、宇宙の誕生がミステリーなら、その宇宙そのものもミステリーに満ちている。まず、宇宙は、次の 3つで構成されていると考えられている。

 

・Normal matter :通常の (目に見える) 物質、約5%

・Dark matter:ダークマター (質量を有する暗黒物質)、約27%

・Dark energy:ダークエネルギー (宇宙の膨張を加速させていると考えられる仮想上のエネルギー)、約68%

 

 つまり、この宇宙は、目に見えるもの (恒星、惑星、岩屑・ガスなど) と、目に見ないものとで成り立っていて、さらに、宇宙に存在する全質量の約85%が、まったく未知の物質「ダークマター」で占められていることになる。

 

 ダークマターは、全ての星雲 (galaxies)、超空洞 (The voids of space)に存在し、「the visivle structure of the Universe (目に見える宇宙の構造)」に影響を与えては、その「scaffolding (足場)」となっている物質だ。

 

・It neither emits nor absorbs light. The only you can very obviously infer its presence is through its interplay with gravity.

[ それは光を発することも吸収することもしない。惟一、その存在を知る手掛かりは、重力の相互作用だけだ。]

 

 ダークマターの重力作用は強力であり、これが宇宙に存在しなければ、無数の星雲はバラバラに飛び散って、その渦巻く姿が保てなくなると考えられている。

 

 さらに、ダークマターの強い重力場が時空をゆがめるため、「background light (背景光)」に曲げや、レンズひずみを起こす。いわゆる「gravitational lensing (重力レンズ効果)」が現われる。

 それは、凸凹の古い板ガラスの窓から外の景色を覗いたときの、像のゆがみのようなものだという。

Warped window graphic

 さて、Cambridge大学の Blake Sherwin教授らの研究チームは、「宇宙の観測可能な限界域 (obserbable Universe)」から地球に到達するCMBを「The Atacama Cosmology Telescope(アタカマ宇宙望遠鏡 ACT)」によって捉えた。さらに、マイクロ波が宇宙空間に存在するダークマターの重力によってゆがめられることを利用して、そのダークマター質量の分布マップを作成した。( 研究の詳細は「The Astrophysical Journal」に発表。

Atacama Cosmology Telescope

 その解析結果の一例が表紙の画像だ。図中にカラーで示した部分は、ACTで観測し、そのデータを解析した宇宙空間域で、さらにオレンジ色が、天空上で質量(物質)の密度の高い領域、また、パープル色は比較的質量の少ない領域を示す。この解析結果によると、数億光年の宇宙空間の全体にわたって、ほぼ、同じような質量分布が、広がっていると言える

 

 また、質量分布図のグレイ・ホワイト領域は、銀河系 (Milky Way galaxy)の宇宙塵(space dust)が干渉して、映像が不鮮明になった領域だ。

 

 この宇宙空間の質量分布マップは、Einsteinの重力理論に基づいて計算される結果にみごとに一致し、宇宙は、質量が凝縮した無数の「lumps (集合体)」から形成されていた。

 

 次に、宇宙の膨張速度を決定する「Hubble constants (ハッブル定数)」も、宇宙の未解決問題 (cosmic tensions)の一つとされてきた。

 この値は、地球上で観測される天体の後退速度と、地球と天体との距離との関係を表わす比例定数Hoであり、Plank(プランク)は Ho=67km/s/Mpcと定めた。すなわち、宇宙の距離単位1magaparsec (メガパーセク) (3.26 million light-years) 当たり、一秒間に67kmの速度で宇宙は膨張していることになる。

 

 しかし、地球から後退する恒星の速度から「Hubble constant」を計算すると

Ho=73km/s/Mpc。

 これに対して、Sherwin教授らが宇宙の膨張速度の計算に「lensing technique」を導入すると、Plankの値にほぼ一致する Ho=68km/s/Mpcが得られた。

 

 両者の違いを説明するためには、今後のさらなる宇宙物理学の発展が待たれるとか。

 

おわりに:Einsteinの重力理論によれば、宇宙空間に巨大な質量が存在すると、その周りの空間にひずみが生じ、直進する光さえも、その空間で進路が曲げられる。逆に、光やマイクロ波のゆがみの程度がわかれば、その空間に存在する質量の大きさが推定できることになる。しかし、今になってみれば、それさえ、ほんのごく初歩的な物理学の知見なのかも知れない。人類が、宇宙の誕生、未知のダークマターあるいはダークエネルギーを説明できる日がやってくるのはいつのことだろう。

    (写真は添付のBBC Newsから引用)

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