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ピノキオの鼻の「リオ・ティント」:豪州の先住民の聖地を爆破! (BBC-News, Dec 9, 2020)

Juukan Gorge cave site before and after mining works

 独自の文化・歴史を有する民族には、決して穢(けが)してはならない「聖域 (sancturary)」がある。ストーン・サークル、神社・仏閣、霊山、アイヌ民族のチャシ、教会などがそれに当たる。

 たとえ、その地下に、どのような金銀財宝が眠っていたとしても、軽々に掘り起こすことはもちろん、爆薬を仕掛けて、地表面を剥ぎ取るなどは、もってのほかだ。

 

 ところが、その「inexcusable acts (あってはならない、許されざる行為)」が、世界屈指の大手鉱山会社 (資源メジャー)「Rio Tinto (リオ・ティント)」の手によってオーストラリア先住民「Pinikura(PKKP) people (ピニクラ民族)」の聖地「Juukan Gorge caves (ジュカーン・ゴージ洞窟)」に対し、行なわれたのだ。

 

 西オーストラリア州「Pilbara (ピルバラ)」で発見され、保存されて来たこの洞窟は、オーストラリアで最も貴重な考古学的遺産だった。なにしろ、およそ4,600年前に先住民がつくり上げた聖なる洞窟であり、それは、最終氷期以降、オーストラリア大陸に人類が住んでいた証(あかし)でもあった。

 

Rio Tinto」は、その地下に眠る高品質の鉄鉱床に目がくらむ。埋蔵量約800万トン (地価約100億円相当)の詳細な鉱床データを得るため、今年の 5月20日、爆破作業を強行したのだ。「Rio Tinto」は、すぐに、世論、株主 (shareholders)の痛烈な批判に晒され、責任を問われた最高経営責任者 Jean-Sebastien Jacquesはじめ、首脳幹部は、職の辞任に追い込まれる。

 

 それでも、そんなことで、世界第 3位の資源メジャーRio Tinto」による文化遺産の破壊行為は、許されるはずがなかった。

 オーストラリア議会は調査に乗り出した。そして、ようやく、その調査結果の報告書「Never Again」(報告書のタイトル)が、この12月 9日(水)公開された。

 それによると、

 

・鉱山会社「Rio Tinto」は、遺跡の歴史的・文化的価値を十分に知りながら、その遺跡を爆破した。

・会社側は、ただちに当地における全ての鉱山開発活動を停止すること。

・会社側は、聖地の所有者である先住民「Pinikura(PKKP) people (ピニクラ民族)」に損害を賠償し、遺跡を復元すること。

文化遺産保護法の改正が必要であること。

 

などが記されているという。

 なお、「Rio Tinto」は、自社の過ちを認めて、これを謝罪し、二度と同じ過ちを犯さないこと、遺跡の復元にはPKKP側と共同で当たることなどを約束したと、BBCは伝える。

 

 さて、「先住民 (indigenous people)」と「原住民 (aboriginal people)とは、ほとんど同じ意味だ。しかし「原住民」には、差別的な蔑視が込められている。とくに、「アボリジー(Aborigines)」と言えば、「Australian Aboriginal people」のことを指すことが多い。

 

 三省堂の「国語辞典」は「原住民」を次のように定義する。

 

・原住民:(「原」は [もともと] の意)征服者や移住者が来る前から、その土地に住み独自の文化を持っていた民族。後、多くは片隅に追いやられ、差別に喘(あえ)ぐ。

   (山田忠雄 他:新明解国語辞典、第6版、三省堂、2005)

 

おわりに:1800年代でもあるまいし、Australiaでは、未だに「先住民」を「原住民 (Aborigies)」と呼んで見下す。かって、オーストラリア大陸に船で送られたUKの流刑者、移民は、先住民を銃で脅してその土地を奪い、カンガルーと同じように殺戮した。どんな権力者であっても、その歴史上の事実は、消すことができない。また、消してはならない。

      (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com