イギリスの若もの:お金がない上、肥満、ぜん息、糖尿病 (BBC-Health, Feb 20, 2019)
子どもの健康を守り、しっかりと教育することは、大人の責任。 まともな心の持ち主の人で、これに異論を唱える人はいないだろう。
かって世界の海を制した大英帝国。その力が衰え、列強の国々の中にあって陰が薄れたとは言え、世界第5位の経済大国だ。その近代国家のイギリスで、子ども達の健康が蝕まれ、貧富の格差が進んで、多くの若ものがお金の工面に苦労しているとは―。これは、尋常ではない。
シンクタンク「The Nuffield Trust」と「The Association for young People's Health (英国青少年健康協会))」が共同で実施した、10歳-24歳の若ものの「health and wellbeing (健康と福祉)」に関する調査結果は、関係者に衝撃を与えた。
調査データは1990年中頃から2018年の青少年を対象とし、調査項目は喫煙率、飲酒量、運動量、肥満・糖尿病の罹患率、自殺率、交通事故率、進学率、失業率などを含む17項目。その分析結果を、以下のヨーロッパ諸国および西側先進国のデータに比較した。
調査対象国 (19ヶ国):
UK, The Netherlands, Denmark, France, Ireland, Portugal, Greece, Germany, Spain, Austria, Belgium, Finland, Italy, Sweden, Japan, US, New Zealand, Australia, and Canada
その結果、UKの若ものは、他の国の若ものに比べてアルコール摂取量が少なく、喫煙率も低かったが、健康面はガタガタだった。
・10 - 24歳の若ものがぜん息で死亡する割合は、ヨーロッパ14ヶ国中、最悪レベル。
・若ものの、およそ 5人に 1人が糖尿病などの治療が長引く病気に罹患。
・15 - 19歳の未成年者の8.1%が肥満。この数値はヨーロッパで最悪。とくに貧困家庭の子どもに肥満率が高い。
・20 - 25歳の若ものがお金がなくて「severe material deprivation (深刻な物資欠乏)」に陥っている。
・調査の17項目のうち、9項目については、比較対象国中、下から 3番目に位置し、4項目については、最下位。
この調査報告に対する「The Department of Health and Social Care (英国保健省)」広報担当官の発言は、少々ピントが外れていたようだ。
"We have world-leading plans in pace to safeguard child health."
[我が国には、子どもの健康を的確に守るためとした、世界トップ水準の計画がある。]
まとめ:子ども達は、やがて国の将来を担う大切な人材。その子ども達の健康が危うい状態で、当局も現実を把握することができずに、現行の健康対策に「complacency (ひとりよがり)」、おまけに国全体がEU離脱問題で意見が分裂していては、数十年後のイギリスという国が危うい。第一、余りの医療負担増に、国の財政がもたない。。
なお、この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。期して謝意を表したい。
The Guardian: February 20, 2019
・Revealed: asthma's deadly toll on young people in the UK
(写真は添付のBBC Newsから引用)