ズキズキする片頭痛:その痛みが消える「エレヌマブ」とは! (BBC-Health, November 30, 2017)
神は人間を平等に創らなかった。「片頭痛 (migraine)」は圧倒的に女性に多い(男性に比べて患者数は 3倍)。英語「migraine」の語源はギリシャ語「hemikrania(half skull の意)」。その名が示すとおり、頭の片側だけに「ズキズキと強烈な痛み (an intense, throbbing headache)」が走る病気だ。
残念ながら、この病気の原因はまだ十分に解明されていない。
片頭痛は、単なる頭痛 (headache)と思われがちだが、その強烈な痛みとともに、光や音に過敏になり、吐き気 (nausea)、嘔吐 (vomiting)、気力低下 (low energy)、視力障害 (visual disturbances) などの症状が現われることもあり、体力を消耗する。
世界の人口の 7人に 1人が片頭痛に苦しんでいるとされ、イギリスにおける患者数は推定 850万人 (日本でもほぼ同じ)。片頭痛の症状が 1ヶ月に 15日以上発生する場合は「慢性片頭痛 (chronic migration)」に、15日以下の発生であれば「一過性片頭痛 (episodic migration)」と診断される。
London大学カレッジ「King's College London」の Peter Goadsby教授らの研究グループは、一過性片頭痛の患者 955人に対して、第3相試験 (phase three trial) に入った臨床試験を実施した。使用したのは、Novartis (ノバルティス社)が開発した抗体「erenumab (エレヌマブ) AMG 334」。この抗体(antibodies) 70mg を月に 1回の皮下注射で投与する臨床試験を 6ヶ月間続けたところ、被験者の約 50%は痛みの感じる日数が半減した。これほどの効果が認められたのは、過去 20年で始めてだという。
「erenumab (エレヌマブ)」は抗CGRP受容体抗体で、「カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide, CGRP)」と神経細胞の CGRP受容体との結合を遮断する。
また、Teva (テバ社)が開発した抗体「fremanezumab (フレマネズマブ)TEV-48125」を慢性片頭痛の患者1,130人に対して「erenumab (エレヌマブ)」と同様に投与したところ、被験者の約 41%は痛みを感じる日数が半減した。
ただし、片頭痛患者の支持団体「Migraine Action」の最高責任 Mr Simon Evansは次のように指摘する。
"Those drugs came with a lot of side-effects and did not work for everyone."
[ これらの抗体薬は副作用を伴うもの。また、誰にでも効くとは限らない。]
確かに、月 1度の皮下注射を受けるだけで、毎日錠剤を飲む必要はなくなる。しかしこの治療は、他の治療法に比べて治療代が高くなるのが問題だ。どれだけ高額になるかは今のところ不明。医療請求書金額の桁数が違うようになるのは間違いなさそうだ。
なお、この1編をまとめるに当たって、正確を期すため以下の「The Guardian」の記事も参考にした。
・the guardian: November 30, 2017
Migraine drug could halve the length of attacks, study shows
(写真は添付のBBC Newsから引用)