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香水、アロマの好みは、なぜ人によって違うのか:匂いの神秘! (RTE-News, Nov 3, 2022)

Many people find the smell of strong perfumes to be irritating. Photo: GVLR/ Shutterstock

 澄み切った空はあくまで青く、燃え盛る炎はあくまで赤い。それは誰の目にも明らかだ。しかし、匂い(smell)となると、そうはいかない。嗅覚の普遍性(universality)は一挙に崩れる。漬物や線香の匂いが耐え難いとするヨーロッパ人は多く、逆に、ヨーロッパで人気のある香水 (perfumes)は、ただ頭が痛くなるだけとする人も少なくない。

 人間は1兆を超える匂いを嗅ぎ分けることができるとされる。ただし、その匂いの良し悪し、好みの程度は人それぞれ。

 

 では、いったい なぜ、匂いの好みは人によって違うのか。その理由として、Durham大学の Amanda Ellison教授は、次の 3点を挙げる。

 

1.Emotions:情動 (匂いは情動に深く結びついている)

 人間のもつ 5つの主要な感覚 (senses) 

・sight:視覚

・hearing:聴覚

・touch:触覚

・taste:味覚

・smell:嗅覚

のうち、嗅覚は人類の祖先がもっとも早期に確保して、進化させた感覚とされ、嗅覚は大脳辺縁系の「emotional system (情動システム)に直結している。

 このため、人が「odour chemicals (匂い成分)」を感知すると、過去に経験した記憶、現在の雰囲気・感情が一緒くたになった情報の中で、目の前の匂いを判断することになるという。

 

 たとえば、病室で嗅いだ医療器具洗浄剤の臭気は「negative memory (嫌な記憶)」として残っているため、後日、その匂いを「one whiff (一嗅ぎ)」するだけで、過去のおぞましい体験がよみがえり、身体はひとりでに「fight or flight stess response (闘争・逃避反応)」を引き起こしてしまう。

 

 このとき、大量の血液循環に備えて、頭頸部 (head and neck area) の生理反応「血管拡張 (vasolidation)」が現われる。さらに、この血管拡張は、血管に埋め込まれた「sensory receptors (感覚受容体)」を活性化させるため、これが痛みの感度を高めて「headache (頭痛)」の発症につながる。A man presses his hands to his temples, his eyes shut in pain from his headache.

 したがって、特定の匂いを嗅いで頭痛を覚えたら、その匂いは、過去の嫌な思い出に強く結びついている可能性が高いと言える。

 

2.Sinus troubles:副鼻腔疾患

 人間の嗅覚器官である「sinus (副鼻腔)」は

・maxillary sinus:上顎洞

・ethmoid sinus:篩骨洞

・frontal sinus:前頭洞

・sphenoid sinus:蝶形骨洞

の4部位から構成され、そのいずれの内壁も「mucus-secreting membrance (粘液分泌液)」で覆われている。

 

 この粘液が鼻や口から入った微粒子を捉えると、免疫システムが働いて、侵入物が「irritants (刺激成分)」であるのかを判断しようと、たくさんの粘液を分泌するため、結果的に「allergy-like symptoms (アレルギーに似た症状)」つまりは「vasolidation (血管拡張)」や「inflammation (炎症)」を起こし、人によっては「headache (頭痛)」さえ発症することになる。

 

 たとえば

 

・formaldehyde:ホルムアルデヒド

・certain cleaning products:ある種の洗浄剤

・cigarette smoke:タバコの煙

 

などの匂い成分は、嗅覚を脳に伝える「trigeminal pathway (三叉神経経路)」に直接働く。三叉神経経路が刺激を受けると、「threat (侵入者)」の侵入と判断され、「inflammation (炎症)」につながるというのだ。

 

3.Odour intolerance:臭気不耐症

 ある特定の匂いに、耐え難い苦痛を感じる。それが「odour intolerance(臭気不耐症)」。

 とくに「migraine sufferers (偏頭痛患者)」は、この「odour intolerance (臭気不耐症)」に罹りやすい傾向がある。たとえば、次のような匂い成分

・cigarette smoke:タバコの煙

・perfumes :香水

・car exhaust:クルマの排気ガス

・cleaing products:洗浄剤

がトリガーとなって偏頭痛を発症することが少なくない。

 

 とくに片頭痛の初期症状段階とされる「priodrome phase (前駆フェイズ)」で「odours (匂い)」に敏感になるので、注意が必要だ。

 

 なお、「priodrome phase (前駆フェイズ)」の特徴として

・a yawning more:あくびが頻繁にでる

・craving certain foods:むしょうに特定の物が食べたくなる

 

 また、「burning smell (焦げくさい匂い)」は「phantom smell (幻覚の匂い)」と呼ばれ、実際に、その場に存在しなくても、患者は思い出しただけで偏頭痛を発症してしまうことが報告されている。

 

 したがって、とにかく、匂いを嗅いだときに頭痛を覚えたことのある人は、

・その匂いに近づかない

・換気を保つ

・それでもだめなら「painkillers (鎮痛剤)」

が保身のベスト。

 

おわりに:多くの昆虫がそうであるように、人間もまたフェロモンによって行動が支配される生物だ。匂いの神秘は深い。匂いの好みには、歴史、風習・伝統、食文化に加えて、個人の嗜好、経験、感情、生理学的変化、それに遺伝子さえ深く関与していると考えられる。だから、芳しい香水やアロマを同じく嗅いでも、誰一人として、同じようには感じないのだ。お気に入りの高価なフランス製パフュームが、「周りの人にとっては迷惑この上ない」ことだってありえることをお忘れなく。

 

 なお、「匂い (smells)」に興味のある方には、次の一冊をすすめる。

・菊池俊英:匂いの世界、みすず書房、1972 

           (写真は添付のRTE Newsから引用)

www.rte.ie