人の顔ぐらい、私だって分かるわよ!:ヒツジは偉かった (BBC-Science & Environment, November 8, 2017)
他人を傷つけ、他人の迷惑になろうが、とんとお構いなし。そんな性格をオオカミ派と自慢さえする「Homo sapiens (人間)」は多い。
ところが、「inoffensiveness (何びとも傷つけず)」をひたすら守り、古くから、人の暮らしに深く関わってきた心優しい動物がいる。その乳はチーズ・バターに、毛は羊毛に加工され、腸にしては楽器に張られて美しい調べを奏で、皮は、聖書の写本になくてはならない羊皮紙として大事に利用された。
おまけに、キリスト教徒の間では、キリスト (Jesus) その人を暗示する。その動物とは、もちろん「sheep (ヒツジ)」のことだ。ヒツジの群れに遭遇すると縁起が良いとされ、その群れが道を渡りきるまで、じっと待っているのか慣わしだった。また、ヒツジには予知能力 (clairvoyance) があるとも言い伝えられた。ヒツジがメェメェと啼いて騒ぐと、天気が崩れて激しい雨になると... 。
Cambridge大学の Jenny Morton 教授らの研究チームは、そのヒツジの「お利口度」を実験で調べた。研究室に連れて来られたのは「Welsh Mountain sheep」の雌8匹。
研究の目的はヒツジに写真判定ができるか、すなわち2次元媒体の写真に対して「顔認識能力 (face recognition abilities)」があるのかを確かめることだった。この事実が明るみになれば、ハンチントン病 (Huntington's disease)、パーキンソン病 (Parkinson's disease)などの「神経変性疾患 (neurodegenerative diseases)」の治療の糸口が見つかるかも知れないという。
US の俳優「Jake Gyllenhaal」、「Harry Potter」シリーズで有名な UK の女優「Emma Watson」そしてBBC TV キャスターの「Fiona Bruce」に「Barack Obama」の「celebrity faces (著名人の顔)」だけを、他の顔から間違いなく区別できるかについて調べたところ、ヒツジが一度覚えた顔は、角度を変えて撮った写真からでも判断できることが分かった。
また、ヒツジの世話係 (custodians) については、実物であれ写真であれ、なんなく見分けられることも確認された。
この実験結果から、ヒツジには、サル、類人猿、人間とほぼ同様の「顔認識能力」が備わっていると言える。
研究チームの次の目標は、ヒツジが人間の色々な顔の表情 (expressions) を理解できるか、確認することだそうだ。
なお、Morton 教授らの研究の詳細は、科学雑誌「Open Biology」に発表された。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)