ロンドン地下鉄のPM2.5濃度: ロンドン市内の30倍 (BBC-News, January 10, 2019)
大気中に浮遊する2.5µm以下の微小な粒子状物質 PM 2.5は、肺組織の奥深くに侵入し、呼吸器系疾患やガンの発症リスクを高める。
WHO (世界保健機関)の環境基準値は年平均 10µg/m3、日平均 25µg/m3。これに対して日本の環境省は年平均 15µg/m3、日平均 35µg/m3とし、UKでもPM 2.5の基準値として年平均 (annual average) 25µg/m3とする。
さて、「The Committee on the Medical Effects of Air Pollutants (英国 大気汚染物質健康影響評価委員会 COMEAP)」が発表したPM 2.5 に関する調査報告書によると、London市内の交通量の多い通りで、PM2.5の値は年平均 16 µg/m3であった。
この値は、WHOの環境指針 10µg/m3を上回るものの、UKの基準値 25µg/m3以下であり、心配するほど、大気は汚れていなかった。
ところが、世界最古の地下鉄として、その歴史を誇る「London Underground (ロンドン地下鉄)」の大気汚染状況は、まったく違っていた。とくに、最悪だったのは、PM2.5の測定値 492µg/m3を記録した「Northern Line」のHampstead Station (ハムステッド駅)だ。
この駅は、地下約60mの位置にあり、地上に出ると、広大な公園と高級住宅街が広がる Londonでも一等地。
この高級住宅地の地下の大気が、ロンドン市内に比べて約30倍の PM 2.5 で汚染されているとは、ひどすぎる。調査に当たった COMEAPは、報告書の中で、「Transport for London (ロンドン交通局)」に対する注意を喚起している。
" It is likely that there is some health risk."
[ 何らかの健康上のリスクが拭いきれない。]
ただし、この報告書のせいで、地下鉄利用者が激減するのを恐れてか、地下鉄構内のPM 2.5については、今後、さらに調査する必要があると、慎重な立場を崩さない。
地下鉄空間に浮かぶ粒子状物質は、地上とは異なり、金属成分の含有率が高い。地下鉄の PM 2.5 が健康に及ぼす影響については、これまで、十分に研究されてこなかったと言うのがその理由だ。COMEAP委員長の Frank Kelly教授は、これまでどおり、地下鉄を利用して欲しいと訴える。
なお、London市内で、同じ距離を移動するのに、バスと地下鉄を利用する際の PM2.5 暴露量を比較すると、地下鉄利用者はバスの利用者に比べて 3倍となるそうだ。
謝辞:この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。
The Guardian: January 9, 2019
・Report sparks concerns over poor air quality on London Underground
(写真は添付のBBC Newsから引用)