春がやって来て、庭のクロッカスが芽を出す頃、喉(のど)が いがらっぽくなり、目の周りが痒(かゆ)くなるのはスギ花粉 (直径約 30μm)のせい。
もちろん、スギ花粉の襲撃前から、クルマ (とくにディーゼル・トラック) の排気ガス、火力発電所、精錬所・工場などから排出される燃焼ガスに多量に含まれる有害な「微小粒子状物質 (fine particulate matter, PM2.5)」で、呼吸器系は、さんざん痛めつけられている。
さらに、中国大陸から黄砂 (径約 4μm)まで飛来しては、目を痛めつける。
つまり、春先は、髪の毛の約 1/30以下の PM2.5 、花粉、黄砂などの大気汚染物質のオンパレードになる。どれもこれも、目・鼻腔・喉の粘膜を刺激し、目のかゆみ、鼻詰まり、くしゃみ、しつこい咳などの症状を引き起こす。
とくに、PM2.5は始末が悪い。肺組織・血管内に侵入し、血管や臓器に損傷を与える。そればかりか、肺ガン、心血管疾患の発症リスクを高め、認知症、喘息の発作の原因にもなりかねない。
では、そのPM2.5 。どれくらいの大気汚染レベルから健康に害を与えるのか。残念ながら、PM2.5に関しては、「これなら安全である」とすることはできないそうだ。
たとえて言うなら、「フグの毒は、どんなに微量であっても毒は毒だ」。
ただし、WHOはPM2.5の環境基準値として 10μg/m3以下と定める。UKではこれよりも基準レベルを緩(ゆる)めて 20μg/m3とする (なお、日本の基準は、UKよりもさらにレベルを下げた 35μg/m3 [ 1日の平均値])。
さて、UKの医療チャリティ団体「The British Lung Foundation, BLF」と「Asthma UK」は、2019年に UK全国の PM2.5 汚染状況を調査し、その結果を報告書にまとめて発表した。
それによると、 UK全土の「care home (高齢者介護施設)」の約 1/4、病院・クリニックの約1/3がWHOの環境基準値を満たしていなかった。
とくに大気汚染がひどい地域は
・Epping Forrest:エッピング・フォレスト
・Luton:ルートン
・Thurrock:サロック
・Reading:レディング
・Slough:スラウ
・Spelthorne:スペルソーン
・Broxbourne:ブロックスボーン
・Dartford:ダートフォード
・Watford:ワトフォード
等を含む 36地域。その大半は UK南部の London周辺に位置する。
Dr Nick Hopkinsonによると、このような大気汚染の状況では、UKに在住する 65歳以上の高齢者約600万人が、肺疾患や喘息の発作のリスクに晒され、毎年、30,000 -40,000人が大気汚染が原因で早死にしていると考えられるそうだ。
おわりに:コロナとは違って、大気汚染物質の PM2.5の原因も責任もはっきりしているのに、経済を優先するあまり、政府の環境保全対策は、まるでカタツムリの動きだ。それでも、「精一杯努力している」と釈明する。いつもの言い訳だ。一般市民は、知らぬまに健康を害し、その命を短くしている。
(写真は添付のBBC Newsから引用)