都会の空気と田舎の空気:肺に異常を起こすのはどっちかな? (BBC-Health, November 25, 2019)
今から約2600年前、Aesop(イソップ)は考えた。『のどかな田舎で、ほそぼそと暮らすのがいいのか、それとも、なんでも豊富にあって、生活は便利だが、危険な都会で暮らすのがいいのか』と。そして、あの誰でも知っている「The Town Mouse and the Country Mouse (都会のネズミと田舎のネズミ)」を書き上げた。
さて、東京も、London, Parisも、ひっきりなしに電車・バス・地下鉄が走り、街中には小ぎれいなお店が並んで、新鮮な野菜・果物も簡単に手に入る。確かに、生活は便利だ。
しかし、ここに来て、Aesopが考えもしなかった都会の「悩ましさ」が浮かび上がった。自動車の排ガスが主な原因の大気汚染 (air pollution)だ。
「King's College London」の Dr Heather Waltonらの研究グループが、UK、Polandの主な主要都市(13)の大気汚染状況を調査した結果、いずれの都市の空気も高い濃度の二 酸化窒素、PM2.5で汚染されていて、幹線道路から50m以内に住んでいる人は、肺ガンの発症率が10%も高く、さらに、その大気汚染が心臓疾患、脳卒中、心不全、気管支炎の発症リスクを高めていることが分かった。
また、幹線道路に近い住宅の子どもは、大気汚染によって、肺の発育が阻害されていた。以下に、阻害率の高いUKの都市を示す。
都市名 肺の発育阻害率
Oxford 14%
London 13%
Birmingham 8%
Liverpool 5%
Nottingham 3%
Southampton 4%
WHOのPM2.5の環境基準は年平均値10µg/m3もしくは24時間平均値25µg/m3。また2酸化窒素については年平均値40µg/m3だ。
ところが、UKのPM2.5の環境基準はWHOの2倍以上と、随分とゆるい設定になっている。
Dr Waltonらは、大気汚染レベルを20%低下させるだけで、Londonに住んで「bronchitic symptoms (気管支炎ぜん息)」に苦しんでいる子どもの数を3,865人減らすことが可能と見る。
大気汚染は、子どもにとって「from cradle to the gave (揺りかごから墓場まで)」深刻な健康被害を及ぼす「恐ろしい都会のワナ」になったのだ。
謝辞:この一文をまとめるに当たって、以下の優れた「The Guardian」の記事も参照した。記して謝意を表したい。
The Guardian:November 25, 2019
・Living neat busy road stunts children's lung growth, study says
(写真は添付のBBC Newsから引用)