ビタミンD:M&Sがパンに添加 (BBC-Health, May 30, 2015)
英語のvitaminは、20世紀のポーランド生まれの米国の生化学者Casimir Funkが、ラテン語のvita(life生命)とamine(アミノ酸)を合成して命名した語。これには、当時、ビタミンにアミノ酸が含まれていると考えられていた背景がある。
日常、大して気にも留めないビタミン、とくにビタミンD。適度な強さの太陽光に恵まれて、普通に生活を送り、魚をよく食べている日本人には、あまり神経質になることもないが、イギリスでは、ビタミンD欠乏症(vitamin D deficiency)は隠れた疫病(hidden epidemic)とされる。
そこで、小売チェーン大手のマークス&スペンサー(Marks and Spencer, M&S)は、パン2切れにビタミンD 1.5µg(イギリス人の1日当たり必要摂取量10µgの15%に相当)以上の割合で添加した自社製パンを、来週から販売することにした。これまで、シリアルやマーガリン、ヨーグルト、牛乳・栄養ドリンクなどの食品に、ビタミンDが添加されることはあったが、ビタミンD入りパンの販売は初めてのこと。
ビタミンDは、体にとって必要不可欠な栄養素であり、サバ、マグロなどの青魚類や卵黄に多く含まれる。また、よく知られているように、太陽光を浴びると、皮膚内で生合成される。しかし、これが、欠乏すると、骨を維持するのに必要なカルシウムやリンが体内で不足して、子供にはくる病(rickets)が発症し、成人には癌(cancer)、アルツハイマー病(Alzheimer's)、骨粗鬆症(osteoporosis)の発症リスクが高くなる。
それでは、そのビタミンDの適切な摂取量はどれくらいなのか。
日本の厚生労働省は、1日の摂取量の目安として5.5µg、上限値を50µgとする。これに対して、イギリスの国民保健サービス(The National Health Service, NHS)では、10µgが目標値、25µg以上の値は健康に有害と警告。一方、米国の国立衛生研究所(The National Institute of Health, NIH)の推奨値は、1日50µg だ。
ずいぶんと、国によって、ビタミンDの「おすすめ」が違うもの。戸惑うばかり。