野生動物：徐々に消え、やがて何もない風景に（BBC-Scienc & Environment， May 2, 2015）
動物園は英語でzoo。これを広辞苑は、「各種の動物を集め飼育して一般の観覧に供する施設」と定義する。しかし、イギリスの辞書(COD)には、「野生動物を研究し、保護し、一般の人に見せるための施設」とある。どちらに、野生動物に対する愛情と敬意が感じられるであろうか。
そこは、子供のころ、ワクワク、ゾクゾクする、楽しい場所であった。大人になるにつれ、狭い檻の中に閉じ込められた動物に、どことなく「あわれ」を感じて、足は遠のいた。
さて、表題の記事は、Oregon州立大学のWilliam Ripple教授を中心とする国際研究チームが、野生動物の生態調査を行ない、このほど、その結果を「Science Advances」に発表した話題。調査の対象は、重さ100㎏を超える大型草食動物（トナカイ、アフリカゾウ、サイ、ゴリラなど）74種だ。その報告によると、大型草食動物の約60％が絶滅の危機の状態にあることが判明。なお、危機に瀕するそれらの多くは、発展途上国に生息しているという。アフリカでは、政情が不安定で、密猟が横行している。加えて、農業用地の拡大とともに野生動物が追いやられ、その「えさ場」さえ家畜と競合する事態が続いている。サイの角はヤミ市場で金、ダイヤモンドよりも高値で取り引きされるため、この先20年足らずで地上から姿を消すであろうと言われる。
大型の草食動物が絶滅すると、どうなるか。以下の４点の問題が起こる。
１．生態系（動植物全体）バランスの崩壊
２．野生動物内の食物連鎖の崩壊（肉食動物の生存は不可能に）
３．草食動物を媒介した植物種子散布システムの崩壊
４．現在、野生動物の肉に依存する10億人の新たな食糧確保と
観光イメージの悪化
森、サバンナ・草原、砂漠。その広がる大地には、駆け回るものは何もない。そんな光景をやがて目にすることになるとは。
