肉体が余りにも悲惨で、おぞましいダメージを受けることから、日頃、ほとんど誰もが目をそむけている病気、それがガン (cancers)だ。その治療法としては、ごく一般的な薬物(化学)治療、放射線治療、外科手術の他に、近年は
・(光)免疫治療
・粒子線・重粒子線治療
・超音波治療
・ロボット(AI)支援外科手術
などの先端治療が開発され、注目されている。
しかし、これらの先端医療については、ガン保険会社がその適用を可能にする医療保険への加入をしきりに推奨するにもかかわらず、その治療の特殊性ゆえに、希望者の誰もがすぐに受けられるものではない。設備が一部の特別な医療機関に限られている上に、高い医療レベルをマスターした医師が極めて少ないからだ。さらに新薬の抗ガン剤は、目が飛び,出るほど高い。
つまり、新型コロナウイルス感染症では、日本国内に住む成人なら、性別、年齢、地域に関わらず、だれもが無料でPCR検査を受けることができて、無料でワクチン接種を受けることができるが、ガン治療に関しては、誰もが、希望する、質の高い医療を受けることなどできないのだ。進行性の肺ガン、膵臓ガンなどの治療は一刻を争う。それなのに、「希望の治療を受けるためには、数ヶ月から数年の待機が必要」と冷たく告げられては、やるせない。
さらに、残念ながら、高度な外科技術あるいは特殊なガン治療技術を習得した医師も、高額な医療設備も、ほとんどが都市部に集中しているのだ。
このため、地方・僻地に住む住人がガンに罹患すると、診察・治療に当たって、都市部の住人に比べてはるかに、時間的、体力的、経済的な負担を強いられることになる。これを「socio-economic inequality (社会・経済的不平等)」という。
さて、Irelandの独立系調査機関「Think-tank for Action on Social Change (社会を変える活動を担うシンク・タンクTASC)」がまとめた調査報告書
・Understanding the challenges of cancer and socio-economic inequality in Ireland(アイルランドにおけるガンの諸課題と社会・経済的不平等を知る)
によると、とくに、早急な経済・医療支援が求められているのは「deprived communities (貧困地域)」の住人だ。医療サービスの主流から外れ (marginalised)た僻地の住人は、都市部の住人に比べて、交通・アクセス面にしろ、医療面にしろ、そのインフラ・サービスがはるかに遅れているため、ガンの(発症・死亡)リスクが高いという。
もっと、地方に、国の予算 (State investment)を投じ、ガン予防の徹底、早期介入診断(earlu diagonous interventions)、治療後回復期の食生活の指導、さらには公園・運動ジムなどのアメニティ (amenities)の改善に取り組むべきであると、報告書は指摘する。
なお、TASCのデイレクター Dr ShanaCohenによると、貧困地域の住人は、
・プライマリー・サービス (primary service)が、なかなか受けられず
・近くに医師が見つからず
・ガン治療の直接・間接的経費(アクセス・コスト、収入減等を含む)に苦しんでいる
状況が、この調査で明るみになったという。
さらに悪いことに、貧困地域のガン患者は、ガンに罹ったことで
・sel-blame (自分を責め)
・stigma (不面目の念)
に取り憑かれる。ガン患者は心理面にも大きな負担を担うのだ。
こうして、貧困地域の住人は、ガンに罹患すると、治療待機中に「outside catchement area (管轄区域外)」への転居を余儀なくされたり、最悪、ホームレスになり、
・significant financial debt (莫大な負債)
・health crisis (健康上の危機)
を同時にこうむることになるという。
加えて、ほとんど知られていないことだが、医療保険に入らず、メディカル・カードも持ち合わせていないと、ガン治療に必要なコストは
・accommodation costs:宿泊・ホテル代
・parking fees:病院の駐車料金
・ambulance and Emergency Department fees:救急搬送・救急外来負担
なども重くのしかかる。
おわりに:最近、ガン治療の最先端医療技術に関するニュースがマスコミで取り上げられることが多くなった。しかし、一般庶民が、その質の高い医療を経済的に無理なく享受できるようになるまでには、まだ相当長い年月を要するかと思われる。
(写真は添付のRTE Newsから引用)