アブラカダブラ われは求め訴えたり:閉じよ、閉ざせ 地獄の門! (RTE-News, January 8, 2022)
中央アジア南西部のカスピ海に臨み、地図上ではIran, Afganistan, Uzbekistan, Kazakhustanに囲まれた国、それがTurkmenistan (トルクメニスタン)だ。かって王国を築いた誇り高きトルクメン人だが、ペルシャ帝国に支配されて、モンゴルのジンギス・カンの侵略を受け、旧ロシア帝国、旧ソ連 USSRに飲み込まれ、ずっとその統治下に置かれた苦い過去の歴史がある。
そして、旧ソ連USSR時代の1971年、この国で、とんでもない事故が発生する。
旧ソ連の地下資源開発の技術者が、「Karakum desert (カラクム砂漠)」の ど真ん中で天然ガスの採掘ボーリングの作業中、誤って「gas cavern (天然ガスの空洞)」に穿孔(せんこう)してしまったのだ。
もちろん、掘削リグは陥没した穴に滑落し、空洞からは大量の天然ガスが地表に湧出して、近隣に拡散した。あわてた旧ソ連の技術者は、そのガスに火をつけて、空洞内のガスを燃やし尽くそうとした。
しかし、火は一旦 燃え上がると、空洞周辺の地層に包蔵された天然ガスに燃え広がり、50年経った今でも、炎を上げて燃え続けている。当初の「gas cavern (天然ガスの空洞)」は、現在、直径 70m、深さ 20mの巨大なクレーターになった。人は、これを「Gateway to Hell (地獄の入り口 、[または地獄の門] )」、「Darvaza gas crater (ダルヴァザ・ガス・クレーター)」と呼ぶ。
Turkmenistanは豊富な石油・天然ガスを有するが、観光資源に乏しい。そこで、旧ソ連の統治下にあった時代は、この「Gateway to Hell (地獄の入り口 )」を観光の目玉に利用した。
1991年、Turkmenistanは、ようやく独立を果たす。そして、この度、現大統領Gurbanguly Berdymukhamedov (グルバングル・ベルディムハメドフ)が、国営テレビに現われて、「Gateway to Hell」を閉鎖すると発表した。『このまま天然ガスを燃え続けさせては、環境にも周辺住民の健康にも悪影響を及ぼす。なにより、貴重な天然ガス資源をむだに燃やすことになる。この資源を有効に活用し、国民の福祉 (well-being)の向上に役立てるべきだ。』
大統領は、さっそく鎮火対策をとるようにと、関係部署に指示を与えたとか。
おわりに:Turkmenisutanに「地獄への入り口」があったとは知らなかった。その入り口を開けてしまった旧ソ連の技術者たち。その後、地獄に吸い込まれたのだろうか。いまごろ、閻魔大王の前でロシア語の「いいわけ」を繰り返しているだろうか。「It's an intriguing issue.(気がかりな点ではある。)」
(写真は添付のRTE Newsから引用)