DNA解析で探る:オオカミがいつ、どこで、なぜイヌになったか? (BBC-Science, October 30, 2020)
あの獰猛(どうもう)なオオカミが、仲間の群れから外れて、いつ頃から人間と寝起きを共にし、一緒に暮らすようになったのか。なぜ、それがクマやトラではなく、オオカミだったのか。それは不思議なことだ。
「Francis Crick Institute (フランシス・クリック研究所)」のDr Pontus Skoglund, Dr Anders Bergströmらの国際研究チームは、世界中の主な犬種の DNA解析に取組み、「whole genomes (全ゲノム配列)」を明らかにした。
その結果によると、今からおよそ11,000前の最終氷期末に、ほんの一部のオオカミが人間の側(そば)で暮らすようになり、当初、北半球でオオカミから派生したイヌ族 (cane)は、5種類だった。
初期のヨーロッパ原種 (European dogs)は、「Near Eastern dogs (近東犬種)」の近縁種と「Siberian dogs (シベリアン・ハスキー)」の近縁種に 2分された。しかし、BC3,500年前頃、青銅器時代に入ると、なぜか、ヨーロッパのイヌの系統 (lineage)は一つだけに絞られる。
また、南アフリカの「Rhodesian Ridgeback (ローデシアン・リッジバック)」、メキシコの「Chihuahua (チワワ)」、「Xoloitzcuintli (ショロイッツクゥイントリ)」にも、オオカミの一部から派生した「古代の固有のイヌ属 (ancient indigeneous dogs)」の遺伝子が確認できるという。
ただし、East Asia (東南アジア)のイヌ族の歴史は複雑だ。中国大陸種の祖先は「Australian dingo (ディンゴ)」、「New Guinea Singing dog (ニューギニア・シンギング・ドッグ)」に遡(さかのぼ)るものもあり、ヨーロッパやロシアの草原に、その先祖を辿(たど)ることもできるという。
イヌとは別に、ネコが人間に飼われるようになったのは、人間の生活の営みが「hunter-gathering (狩猟採集)」から「farming (農耕) 」に変わった約6,000年前の頃とされる。したがって、人類とイヌ属 (cane)との付き合いは、ネコよりも断然、古いことになる。
おわりに:ネコは人間がエサをくれるから、その側(そば)にいるだけだ。しかし、イヌには、人間の言葉を理解しようとし、人間と喜び・悲しみを分かち合う「共感 (empathy)」の心がある。だから、イヌ族は人類にとって正真正銘の「companions (伴侶)」だったと言えよう。残念ながら、最新のDNA解析技術をもってしても、イヌ族がいつ、どこで、なぜ、オオカミから分派したのかについて、正確に説明することは難しいとのことだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)