妊娠中のストレス:怒鳴って泣いて、他人を責める子どもが生まれる! (BBC-Health, September 6, 2019)
あなたの職場や近くに、いつも怒鳴って、他人の意見を聞かず、突然怒り出すまたは泣き出す。あるいは、他人の迷惑を顧みず、執拗にまとわりついて助言・助けを求める一方で、自分の不幸、失敗、不運を他人のせいにし、他人を厳しく責める。そんな上司、同僚は、いませんか。それはその人の性格だが、やっかいな性格だ。結論から言えば「精神疾患」だ。
「十人十色 (じゅうにんといろ) (Many men, many minds.)」という。好みや考え方は人それぞれ。それは、その人の「人がら、人格 (personality)」を特徴づけるものだとも言える。
COD (11th ed.)は、この「personality (人格)」を次のように定義する。
Personality: the combination of characteristics or quantities that form an individual' distinctive character
[ その人独自の人となりをつくり上げている個性・性質の全て]
ひとり一人の「personality (人格)」が尊重されなければならないのは、もちろんのことだ。ただし、人間は一人では生きて行けない。家庭や社会との絆 (きずな)を深め、互いに協力し、社会のルールを守り、他人の意見・考え方、他人の生活・生命を尊重することが求められる。
しかし、長期にわたって、次のような行動
・emotionally unstable:情緒不安定 (泣き出す、怒り出す)
・overly anxious:過剰な不安 (友人に対する懐疑心)
・anti-social:非社交的
1) 他人の意見に耳を貸さない
2) 突然、怒鳴り声を上げる
3) 他人 (友人、相談者、カウンセラー)を一方的に責める
4) 引きこもる
5) 自傷・自殺念慮
には、家族に限らず、職場や周りが振り回される。これは「personality disorder (パーソナリティ障害、人格障害 PD)」の疑いが強い。
PDは20人に1人が発症する「精神疾患 (psychiatric diseases)」だ。PDの人は、うつ病や薬物・アルコール問題など、他の「心の病」を抱えていることが多い。
では、一体なぜ、「人並み」あるいは「少なくとも他人の心を傷つけない」行動がとれず、異常とも思える性格に凝り固まってしまうのか。
「The Royal College of Surgeons」(Ireland)の Mr Ross Branniganらの研究チームは、Finlandの首都 Helsinki周辺に住む妊娠中の女性3,626人に協力を依頼し、妊娠中のストレスが、生まれた子ともにどのように影響するのかを明らかにする追跡調査を実施した。
1975-1976年の間に生まれた新生児が30歳になったとき、精神疾患の診察を受けてもらった。すると、入院が必要なほど深刻な「personality disorder (パーソナリティ障害)」と判定されたのは40人だった。
この診察データと妊娠中の健康データを総合的に分析したところ、妊娠中に強いストレスを受けると、生まれた子どもが30歳になるまでにPDを発症する確率は、ストレスを受けない人に比べて約10倍高くなることが分かった。
しかし、なぜ、妊娠中にストレスを受けると、生まれた子どもが「パーソナリティ障害」になってしまう(あるいは、その傾向が強くなる)のかは不明。
胎児の脳内神経細胞に何らかの異変が発生する可能性も考えられる。
ただし、「personality disorder (パーソナリティ障害)」は以下の要因によっても起こり得るとされる。
・inherited genes:遺伝性
・children's upbringing:子どもの養育環境
・family's financial situation:家計(困窮)状況
・trauma experienced during childhood:子どものときに受けたトラウマ
なお、Mr Branniganらの研究結果の詳細は、医学雑誌「The British Journal of Psychiatry」に発表された
(写真は添付のBBC Newsから引用)