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ゲノム編集「心不全治療」:熱帯魚テトラの遺伝子を探れ! (BBC-Health, November 21, 2018)

https://ichef.bbci.co.uk/news/736/cpsprodpb/154AB/production/_104411278_blindfish.png

 ホテルやレストランの水槽の中でよく見かける淡水熱帯魚のテトラ。なかでも、メキシコ北部の河川に生息する「Mexican tetra fish」は数奇な運命をたどった種だ。
 およそ150万年前、突如として襲った洪水により、そのテトラ種は洞窟の中まで押し流されて、その後、そこに閉じ込められてしまった。
 悠久の暗闇 (perpetual darkness)の中で、テトラの目は退化し、体の色素を失った。しかし、失ったものは、それだけではなかった。テトラの特異な生存能力である「heart tissue (心組織)」の「self-healing (自己治癒力)」まで失ったのだ。

 Oxford大学の Dr Mathilda Mommersteegらの研究グループは、河川に生息する「Mexican tetra fish」とそれが洞窟内で進化した「Blind cave tetra」の2種のテトラの遺伝子を比較した。すると、洞窟に生息するテトラには遺伝子「lrrc 10」と「caveolin」が欠けていること、したがって、この2つの遺伝子が心臓の自己治癒に大きく関与しているらしいことが分かった。
 そこで、鑑賞魚「zebrafish (ゼブラフィッシュ)」の遺伝子を操作し、その遺伝子「lrrc 10」のスイッチをオフにしたところ、やはり「zewbrafish」も心組織の自己治癒力を失った。

 もちろん、遺伝子「lrrc 10」、「caveolin」は人間にも存在し、とくに「lrrc 10」は「拡張型心筋症 (dilated cardiomyopathy)」に関与していることが分かっている。

 現在、心臓発作 (heart attack)などで「心不全(heart failure)」で苦しむ患者はイギリスで数十万人。しかも、過去20年間、心不全の「生存率 (survival rates)」はほとんど変わっていない。心不全発症後の「平均余命(life expectancy)」は、大抵のガンよりも短い。
 その原因はこうだ。人間の心臓は、一度、損傷を受けると、河川に住む熱帯魚「テトラ」のように、その傷を修復させることができない。心不全患者は、一生不自由な生活を強いられるか、「heart transplants (心臓移植)」を選ぶか、どちらかの選択に迫られる。

 この発見で、いつの日か、心不全の治療には、「Crison-Cas9」などの核酸分解酵素「ヌクターゼ」を使ったゲノム編集が実施され、DNAを修復して「心組織」の回復を目指すことも夢ではなくなった。

 なお、Dr Mommersteegら研究結果の詳細は、医学雑誌「Cell Reports」に発表された。

                     (写真は添付のBBC Newsから引用)

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