海賊ヴァイキング:略奪、破壊、人殺し、他に何をした! (BBC-News, November 17, 2018)
「Viking (ヴァイキング)」とは、Denmark, Sweden, Norway一帯の Scandinavia 地域に住んで、ヨーロッパ中を荒らし回った海賊のこと。とくに 8世紀から10世紀にかけて、その略奪行為はひどいものだった。
彼らは、春になると畑に種を撒き、農耕もやることはやったが、夏になると、船団を組んでヨーロッパ海岸のほとんどの都市・町を襲撃し、街や教会・修道院からありとあらゆる金目の物、食糧、蜂蜜、毛皮などを略奪した。あげくの果てに、善良な人びとを奴隷として連れ去り、奪ったものは、一部を根拠地の食料庫に貯め込み、他は、塩、染料、スパイスとの交換に利用した。
いくらキリスト教徒が教会で祈りを捧げても、神の力はヴァイキングに及ばない。それもそのはず、彼らは皆、その胸に、神々の力を打ち砕く「Thor's Hammer Myolinir (トールハンマー・ミョルニル)」をぶら下げ、これさえあれば、どんな敵にでも勝てると信じていた。
北方の海賊集団は「Volga Rive (ヴォルガ川)」を遡り、抗 (あらが)う民を蹴散らし、その岸辺に定住した。外からやって来たこの集団は、「Rus」と呼ばれるようになり、それが「Russia (ロシア)」の語源になった。
海賊は、この「Volga」を拠点にして、奪った品々や奴隷を売りさばくため、北ヨーロッパからアラビア諸国、「Byzantine Empire (ビザンティン帝国)」に至る交易ルートまでつくり上げた。
その面構(つらがま)えと屈強な体力、情け容赦のない非情な性格もさることながら、なぜか、造船技術と航海技術にも優れていた。
彼らの作った「Viking ships (ヴァイキング船)」は、軽量な上に、造波抵抗を抑えるため、海上を走る際には船体の周りにバブルができるように設計されていた。
また、航海に当たっては「sun compass (太陽コンパス)」で時間を知り、「crystal sunstone (日長石結晶)」の偏光特性を活かして、霧の中でも太陽の位置と航路進路を知ることができた。
このような技術を駆使して、10世紀末になると、すでにヴァイキングは北アメリカ、グリーンランドの地までその足を伸ばしていた。
なお、Thursday (木曜日)の語源は、雷電の神「Thor (トール)」。ヴァイキングの掟(おきて)は、ヨーロッパ中の「ethical codes (倫理規定)」、「ownership (所有権)」に取り入れられた。掟にそむいた者は「Thing」で裁かれた。そこには女性も男性と同じように参加して発言することが認められたという。
ヴァイキンクの掟(おきて)には、こんな掟もあった。
・Don't kill, don't steal. [殺すな、盗むな。]
ただし、これはスカンジナビア人の海賊の間の掟。一旦、外に出たら、この限りにはあらずだった。
結局、ヴァイキングは、血も涙もない、ただの人殺しで、盗っ人だった。どれほどの罪のない善良な人間が、財産を奪われ、殺され、苦しめられ、奴隷にされたことだろう。
それでも「Viking」が好きな人は、次の本をどうぞ。
・Terry Jones: The Saga of Erik the Viking, Puffin Books, 1985
・ルーネル・ヨンソン作、大塚勇三訳:小さなバイキング、学習研究社、1967
(写真は添付のBBC Newsから引用)