世界を変えた靴(シューズ・ファッション):10種 (BBC-Culture, June 18, 2015)
英語の「shoe」は、ゲルマン語「scoh (cover: 覆い)」が語源。漢字「靴」は、中国六朝時代に騎馬民族の履いた革のクツに由来する。日本では、奈良に都が置かれていた頃、庶民は裸足(はだし)、つまり、靴を履いていなかった。その後は、庶民、官民にかかわらず、履いても良いが、身分によって靴の種類が決められていたという。どうにもきゅう「くつ」な世の話だ。
さて、表題では「その時代に、謳歌された靴」10足のそれぞれに、寸評が加えられる。ここでは、その中から3点を取り上げた。
・黄金のサンダル(Gold Sandal)(About 30BC-AD300)
靴は常に権力の象徴(status symbol)であった。それは、今でも変わらない。
古代ローマ帝国のエジプトから発見された一品は、まさに権力を誇示するための工芸品だ。パピルス(papyrus)の素材で木の葉の形に作られたこのサンダルには、金箔が張られ、美しく仕上げられている。
しかし、履き心地は二の次のサンダルだ。これを履いた権力者は、さぞかし、痛い思い(extravagant pain)をしたことだろう。
・プーラン(Poulaine)(1375-1400)
14世紀後半、ヨーロッパを席巻した靴がプーラン(仏語Polish styleの意)。「cracknows」とも呼ばれた。昨今、一部でもてはやされる先細シューズ(winkle-picker)の先駆け(precursor)となるもの。つま先の部分には苔(moss)が詰めてあり、これを上向きに曲げて、歩きやすいように工夫がなされている。
もちろん、この靴は労働には向かない。ベルベット(velvet)やサテン(satin)を身にまとった裕福な中流以上の階級層が好んで履いたとされる。ただし、プーランで気どった御仁は、外反母趾(bunions)、槌状足指症(hammer-toes)で悩まされたはずだという。
・赤いバレーシューズ(Red Ballet Shoes)(1948)
靴は、昔話(folk tales)や童話(fairly tales)にも登場し、重要な役割を演じる。
「グリム童話」、「ペローの昔話」の主人公シンデレラ(Cinderella)は仏語のサンドリヨン(Cendrillon)「灰かぶり」という意味だ。「シンデレラ」の話の中心は、「ガラスの靴(glass slipper)」。この物語には、実は、紀元前1世紀にさかのぼる「エジプトの支配者」、「ギリシャ人の奴隷の少女」、「靴だめし(slipper test)」などのモチーフが隠されているという。
さて、「赤いバレーシューズ」は1948年のイギリスの映画「赤い靴(The Red Shoes)」の主人公役モイラ・シアラー(Moira Shearer)のために、特別に製作された一品。もちろん、この映画の原作はアンデルセン童話の「赤い靴」。1人の少女が赤い靴に取り憑かれる悲劇だ。寂寞(せきばく)と宗教臭が余りにも強く、どうしても好きにはなれないアンデルセン作品の一つではある。
(写真は添付のBBC Newsから引用)