遺伝子組換えのオメガ 3:これで太った養殖サーモンのお味は? (BBC-Science & Environment, August 1, 2018)
スーパーの店頭で、広い売り場面積を確保しているのは、各種・各銘柄の納豆だ。しかし、価格の安い納豆は、そのほとんどが遺伝子組換えの大豆 (北米産)を原料とした商品だ。
そもそも、「遺伝子組換え作物 (Genetically Modified Crops)」とは、農薬散布の手間を省いて生産コストを下げるために開発されたもの。人体あるいは自然環境に対する安全性を巡って、意見が分かれるのは、原子力発電と同じだ。
さて、その「遺伝子組換え」、略してGM。この技術が「サーモンの養殖業」にも使われようとしている。
海洋を回遊するサーモンには、多価不飽和脂肪酸のオメガ 3が豊富に含まれている。オメガ 3は脳の発達に寄与し、心臓疾患や関節炎 (arthritis)の発症リスクを減少させる働きがあると考えられている。
ところが、ある調査によると、養殖サーモン (farmed salmon)に含まれるオメガ 3が、過去10年間で半減したという。このため、養殖業者は、サーモンのオメガ3のレベルを維持するために躍起だ。乾燥させた「anchovies (背黒イワシ)」を粉末にしてペレット状に加工し、これを海を網で囲った養殖場で、サーモンにエサとして与えることもある。
ところが最近になってサーモンの需要が伸び続け、エサとなる「anchovies」の確保が難しくなって来た。
そこで、Scotlandで活躍する Stirling大学の Douglass Tocher教授らの研究グループが取り組んだのは、イワシの替わりになる「オメガ 3」たっぷりのエサの開発だった。
遺伝子組換え技術を応用して、「camelina plant (アマナズナ属)」に、ある海草(Marin algae)の遺伝子を組み入れ、この植物がオメガ 3を大量に生成するように改良した。これを養殖サーモンに与えたところ、サーモンのオメガ 3の含有量を高まり、実験段階では成功した。
この研究成果を踏まえて、今後、実際のサーモン養殖場で、同様の効果が得られるのか、確認する予定だという。
しかし、EUの「遺伝子組換え食品」に対する規制は厳しい。「BM fed salmon (GMのエサで養殖したサーモン)」の生産に成功したところで、これをEU諸国で販売することは、おそらく不可能。当面は、南北アフリカ、アジアをその販売先と見る。
ただし、イギリスがEUから脱退すれば別だ。遺伝子組換え食品に対する規制の見直しが迫られるからだ。研究グループは、その規制緩和を望んでいるようだ。
一方、非営利団体「GM Freeze」のMis Liz O'Neilは、遺伝子組換え技術を使って大量にサーモンを生産しても、それは「a fundamentally unsustainable and inefficient form of producing food(基本的に持続不可能かつ非効率的な食糧生産シルテム)」であって、問題の「holistic solution (全体的な解決策)」にはなり得ないと主張する。
結論:「納豆巻き」はともかく、いよいよ、サーモンのお寿司も危なくなってきた。『このサーモンの養殖には、遺伝子組換えのエサが使用されています』などと、長ったらしく正直に表示するとは、とても思えない。
確かなことは 1つだけある。自分の健康を守るためには、養殖サーモンのエサにまで注意しなければならない時代に入ったことだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)