毛のないミクロ熊「クマムシ」:宇宙でも生き延びる生物! (BBC-Science & Environment, July 28, 2017)
宇宙空間は -270℃で真空。放射線が飛び交う苛酷な環境だ。しかし、そのような自然環境にあっても生き抜ける生物が地球上にいる。「tardigrades (クマムシ)」と呼ばれる体長 1mm前後の生物だ。体型は毛のない熊に似ているが、丸い口に4対のズングリ足を持ち、その先端には複数の爪がある。
主としてコケ (moss) や池 (ponds) に生息するが、その仲間は深海底から極地まで、ほとんどあらゆる地球上に生息している。たとえ、地球に「cosmic disaster (大惨事)」が起こっても、このクマムシは生き残ることが可能とさえ言われている。
極端な乾燥にも耐性があり、数年間、カチカチになっても、水を掛けると息を吹き返す (spring back to life)。
Edinburgh 大学の Mark Blaxter 教授らの研究グループは、このクマムシの DNA 情報を解析し、その生命力 (survival ability) のなぞに迫った。
すると、
"Dry conditions trigger some of the creature's genes to produce proteins which replace missing water in their cells. Once water is available again it refills the cells dissolving the proteins,"
[ 生息環境が乾燥状態になると、この生物の遺伝子が働いて、ある種のタンパク質を作り出し、そのタンパク質で細胞内の水分を代用するようになる。しかし、水が与えられると、タンパク質の溶解した細胞内に、再び水分が補充される。]
さらに、この生物の DNA設計図を解読すると、「long-standing controversy (長年、論争の的になっていた)」クマムシの正体が明らかになった。
その決め手となったのは、動物の「embryo (胚)」発生の段階で、頭や尾、手足の位置を決定する「HOX genes (ホメティック遺伝子)」の数。クマムシの「HOX genes」は「roundworms (回虫)」と同じ5ヶだった。つまり、クマムシは「insects (昆虫)」ではなく、「worms (蠕虫)」の仲間だった。
Blaxter 教授らは、クマムシの驚くべき生命力のメカニズムをさらに解明し、常温で「live vaccines (生ワクチン)」を輸送、貯蔵する手法の開発につなげたい考えだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)