地球温暖化で:航空チケット値上げ? (BBC-Science & Environment, February 10, 2016)
「ジェット気流 (jet stream)」とは、南北両半球の高緯度で、対流圏上層部に発生する強い偏西風を指す。飛行機が、このジェット気流に乗ると燃料代を節約できる。しかし、そのジェット気流に異変が起きているという。地球温暖化の影響でジェット気流の速度が増しているのだ。
昨年の 1 月、西から東に流れるジェット気流のお陰で、New York - London 間の飛行便が、5 時間16分の最短飛行時間を記録した。この飛行ルートは 1 日約 600 便が飛び交う、世界で最も飛行機が混み合う空の一つだ。
アメリカ Reading 大学の研究チームは、CO2 排出量が 2倍になると、ジェット気流がどのように変化し、それが飛行時間にどのような影響を及ぼすかについて、コンピュータ・シミュレーションモデルにより解析した。詳細な研究内容は科学雑誌「Environmental Research Letters」に掲載されている。
その結果、ジェット気流は平均15%も速度が速くなり、この影響を受けて、ロンドン発ニューヨーク行き航行便の飛行所要時間は 7 時間、逆に、ニューヨーク発ロンドン行き航空便は、強い追い風を受けて 5 時間 20 分で飛行可能となることがわかった。
すなわち「東回りフライト (eastbound flights)」か「西回りフライト (westbound flights)」かによって、飛行時間に現在よりも「4,5分 (a few minutes)」の差が現われる。
この差は小さいように見えても、積算されると航空会社にとっては、「significant impact (重大な影響)」となる。
「大西洋横断航空便 (transatlantic aircraft)」の全てを積算すると、今よりも年間2,000 時間余計に飛行することになり、燃料代にして $22 million (約 25 億円)の負担を余儀なくされる。一方、その余分な飛行によって大気中に放出される CO2 の排出量も 7 万トンにのぼる。これは、イギリスの一般家庭 7,000 件が、1年間に排出する CO2 量に匹敵する値だ。
航空会社が負担する燃料代は、やがて、航空チケットの値上がりにつながると、予想される。
今回のシミュレーション解析は、LondonーNew York 間の飛行ルートに絞った研究であった。しかし、地球温暖化によってジェット気流の速度が増すと、世界中の航空便に深刻な影響を来すことは、間違いなさそうだ。
(写真は添付のBBC Newsから引用)