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乳ガン腫瘍細胞の突然変異体:そのバーコードを探って分子治療 (BBC-Health, June 27, 2018)

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 「戦いに勝つための必須条件は、敵を知ること」。これは、孫子がBC500年ころ中国最古の兵書「孫子」で諭した言葉だ。

  ところが、ガン (cancers)の治療では、この兵法の基本に準じた戦いができずに、遠回りの、かつ、的外れの戦法を強いられ、どれだけ、無駄な人命・財・時間を失ったことだろうか。
 
 ようやく、最近になって、ガンの正体(敵の輪郭)が徐々につかめるようになった。
 ガン腫瘍細胞の「DNA sequencing (DNA シークエンシング)」を調べると、それが、スーパーの商品を分類する「barcode (バーコード)」のように、遺伝子変異の特徴が手に取るように分かり、例えば、一口で「乳ガン (breast cancer)」と言っても、種々のタイプのガンが存在することもはっきりしてきた。

 これまで、ほとんど「やみくも (haphazardly)」に近い状態で、「surgery (外科摘出手術)]、「chemotherapy (化学療法)」、「radiotherapy (放射線療法)」を繰り返し、副作用の強い、あるいは目の玉が飛び出るような高額の抗がん剤を使っても、ガンが再発あるいは転移するケースも数知れなかった。
 医者は、「incurable (お手上げ)」と密かにつぶやいていたに違いない。

 Cambridge大学「Cancer Research UK Cambridge Institute」の Carlos Caldas教授らの研究チームは、2016年、乳ガン患者 275人を対象にした「The Personalaised Breast Cancer Programme in Cambridge」を開始した。この研究プログラムの目的は、ガン腫瘍組織サンプルに加えて血液サンプルの「liquid biopsy (リキッド・バイオプシー)」によって、ガン細胞の認識バーコードとなる「DNA sequencing」をさらけ出し、遺伝子変異や免疫細胞の特徴を明確にすること。
 こうすることによって、始めて、治療対象のガンを正確に判別できて、「precision medicine (精密治療)」が可能となる。

さて、「How it works (ガン腫瘍細胞のバーコード認識がどのように役立つか)」については次の5項目が挙げられる。

1.All cancer patients have two genomes - the so-called germline DNA they inherited from their parents and the corrupted genetic code in their cancer.

2.Women diagnosed with breast cancer in Cambridge have a sample of their tumour and of their blood sent to sequencing, with the full results coming back whin 12 weeks.

3.The germine genome can tell whether they inherited mutations in BRCA1, BRCA2 genes, which increases their risk of both breast and ovarian cancer - these finding can also have implications for wider family.

4.Tumour sequencing allows researchers to catalogue at the mutations in cancer cells and enables them to predict whether they will respond to specific treatments.

5.Some drugs, known as targeted therapies, are designed for people whose cancer cells have specific gene mutations which 'drive' tumour growth.

1.全ての乳ガン患者には、親から引き継いだ「生殖細胞系列DNA」とガン腫瘍細胞内の損傷した遺伝子コードという、2種類の「ゲノム(遺伝子情報)」が存在する。

2.ケンブリッジで乳ガンと診断された女性患者は、ガン腫瘍細胞サンプルの外にDNAシークエンシング解析に向けて採血が取られ、その検査結果は12週間以内に判明する。

3.生殖細胞系列ゲノムが明らかになると、親から引き継いだ遺伝子BRCA1, BRCA2の変異が確認できる。2つの遺伝子に変異が認められると、乳ガンや卵巣ガンの発症リスクが高くなる。また、そのリスクは家族の広範囲に及ぶことを示唆するものとなる。

4.ガン腫瘍細胞のDNAシークエンシング解析結果は、医療研究者にとって、ガン細胞内の全ての突然変異組織のカタログを手にしたようなものであり、このカタログを使うと、特殊な治療の有効性があらかじめ予測できる。

5.ガン腫瘍細胞に、ガンを増殖させる特異な遺伝子変異が見つかった患者に対しては、特定のガン細胞分子だけを分子レベルで治療する「分子標的療法」が採用され、このための特別な抗ガン剤が設計される。

 さら、「DNA sequencing」の結果に基づく治療と平行して、治療薬の有効性を確認するために、マウスを使った「mouse avatars(マウス・アバター)」が進められるため、患者各人にとって最も副作用のない、最も効果的な抗がん剤による治療「personalised medicine(個別化治療)」が可能となる。

 ただし、残念なことに、この新たな乳ガン治療技術は、「research stage (研究段階)」に留まる。このような治療を一刻でも早く受けたいと願う患者は、どんなに多いことだろう。研究者・医療現場は、「病で苦しむ人」の声に、耳をふさいではいけない。

 なお、ガン医療に興味のある方には、次の一冊を薦める。

国立がん研究センター研究所:「がん」はなぜできるのか、そのメカニズムからゲノム医療まで、講談社ブルーバックス、2018

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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