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樹齢200年の柳:カーヌスティの保存樹に (BBC-News, August 23, 2015)

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 柳(willows)の茂る川辺が舞台の、ケネス・グレーアム(Kenneth Grahame)作「The Wind of the Willows」、日本語版「たのしい川べ(石井桃子訳:岩波出版)」は、モグラやヒキガエルが登場するファンタジー。子供向きに書かれたが、当時のイギリス社会を風刺した作品とも言われ、随所に鋭い風刺のトゲが見え隠れする。
 
 西洋では、古くから柳は「悲しみ」のシンボルとされ、お墓に植えられた。また、その枝で魔女が箒(ほうき)を作るとも、柳が「魔法の霧」を起こすとも信じられた。
 そのような背景がある柳だ。夜、その木が風に揺れると、誰もが「神秘的で異様な力」を感じたに違いない。
                                                              
 さて、スコットランド東部の小さな港町カーヌスティ(Carnoustie)に樹齢200年の柳の樹があった。裏小路(back lane)と廃屋となった公衆トイレ(disused public toilet)に挟まれるように鬱そうと茂る柳。高さは9mもあり、町の人は「クリケット・バット(cricket bat)」と呼んだ。
 この古い柳の樹を切り倒すか、保存するかで、町は18年間も論争を続けたという。

 そもそも、この町の名前「Carnoustie」とはスコットランド語「Craw's noustie」すなわち英語「Crow's nest(カラスの巣)」に由来する。毎年この樹でカラスが巣作りをしたことに因むとか。

 Carnoustieの町の記録によると、1人の船大工兼漁師の男がこの地にやって来て住み着いた。庭に種を蒔くため柳の枝で穴をあけ、作業後に枝をそのまま地に刺して置いたところ、それが芽を出したという。1797年のことだ。

   その後、柳はどんどん生長し、それと同時に、Carnoustieの町は、この柳の周りに発展していったと記録は伝える。

 柳の樹が150年以上も生きることは稀(まれ)。しかし、Carnoustieの柳は別だ。19世紀に一度落雷を受けて、幹がほとんど根元まで裂けたこともあったが、生き延びた。

 そして、アンガス(Angus)州のHelen Oswald市長(provost)の決断が下る。

"Its such an integral part of how Carnoustie came to be. It would be tremendous shame to see it damaged or taken down."
[あの柳の樹はカーヌスティの歴史を語る上で、なくてはならないもの。樹が傷つけられれたり、切り倒されるのを見るのは、とてつもなく絶えられない恥辱だ。]

 樹には命がある。その場所に歴史を見て立って来た。邪魔になったから、気味が悪いからという理由で切り倒すのは、余りにも人間の「わがまま(egoism)」が過ぎる。

 そのような人のわがままは、「柳に風と受け流す」ことに限る。

             (写真は添付のBBC Newsから引用)
 

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