類人猿が樹の上から地上に降りて進化:それは1,200万年前だった! (BBC-Science & Environment, November 6, 2019)
ゴリラ・チンパンジーなどの類人猿 (Great Apes)と、ヒト属 (Homo)との違いは何か。
体中に長い毛が生えている、生えていないの違いがあっても、DNAの遺伝子配列にはそれほどの差がないという。もちろん、悪いことをする方がヒト属で、家族・仲間思いの霊長類 (Primates)が類人猿だ。
しかし、とにもかくにも、人類とサルの仲間との違いを決定づけるのは、「直立2足歩行 (upright bipedal walking)」にある。
人類の原始の祖先が、樹の上から地上に降りては、足 (hindlimbs)ですっくと立ち上がり、地上を歩き始めたときから進化が始まったとされる。自由になった手 (forelimbs)で物に触れたり、道具をつくって、これを使うことを知り、住み慣れた森を離れて遠くにまで歩き回ることを知り、採取した木の実や、動物の肉をねぐらに運ぶことを知った。
「直立2足歩行 (upright bipedal walking)」は「a key milestone in human revolution (人類の進化において画期的な出来事)」であったのだ。
では、その進化の切っ掛けとなった「bipedal walking (2足歩行)」は、いつ頃のことだったのか。これまで、人類史のテキストでは、今から600 - 700万年前とされて来た。
ところが、この定説を覆(くつがえ)す大発見がドイツ南部の「Bayern (バイエルン州)」であった。2015-2018年に掛けて実施された発掘調査で、粘土層のくぼみ (clay pit)から、保存状態の良い4体(オス1、メス2 、子ども1) の新種の類人猿「Danuvius Guggenmosi」の化石が発見されたのだ。オスの化石はほとんど完璧な骨格をなしていて、現世の「ボノボ」に似ていた。オスの身長は約 1m、体重は約31kg、メスの体重は約18kgと推定される。
調査に当たった Tübingen大学の Madelaine Böhme教授によると、この化石の類人猿が生きた時代は、今からおよそ1,162万年前の「The Miocene (中新世)」。これまでの定説よりもはるかに過去に遡(さかのぼ)る時代だ。
化石のlimb bones (四肢骨)、vertebra (脊髄骨)、fingers (指)、toe bones (足の指の骨)の形を調べることによって、新種の類人猿「Danuvius (ダヌヴィウス)」の四肢(手足)の動き・機能が明らかにされた。なんと、その四肢の形状は、類人猿とはまったく違って、むしろヒト属(Homo)の骨に似ていた。
「Danuvius (ダヌヴィウス)」は、一般の類人猿のように、樹に上ることも上手で、2足歩行もうまくできたと考えられるという。(なお、Böhme教授らの研究の詳細は「Nature」に発表された。)
おわりに:うぬぼれたヒト属(Homo)は、自らを「万物の霊長」と呼んだ。進化(evolution)とは何だったのだろう。まさか、肉体の進化にともなって、知性・精神が「devolution (退化)」したのではあるまいか。
(写真は添付のBBC Newsから引用)