医者の英語はちんぷん漢粉:もっと患者に分かる英語を! (BBC-Health, September 4, 2018)
犯罪組織、警察、芸人、職人、そしてこの頃は、政治家・官僚までも隠語 (jargon)と呼ばれる、仲間同士以外は意味不明な特殊な言葉を使う。「デカ」、「ホシ」、「テキヤ」、「シャリ」に加えて、「誠にイカン(遺憾)」、「シュクシュク(粛々)」なども限りなく隠語に近くなった。
隠語 (jargon)も、よく言えば「専門用語 (technical terms)」。しかし、仲間同士ならいざ知らず、『医者が患者に隠語を使ってはいけない。また、患者に対する文書では、その言い方・言い回し (tones of letters)にも気をつけるべし』とのお達しが出た。日本では、とうてい望めそうもない話(topics)だ。
UKでは、医者が患者に送った「検査結果や照会状などの文書 (clinical letters)」の内容が、まったく理解できないとの苦情が相次いだ。文書は読み手が理解できなければ、その目的を果たせない。受け取った本人が皆目検討もつかいない「ちんぷんかんぷん(珍粉漢粉)」とあっては、「blunders (とんでもない間違い)」や「offence (思わぬ失礼な誤解)」を招きかねない。
その原因は、医者が多用する「medical jargon (医者の隠語)」にあった。
たとえば、「bd」はラテン語「bis die sumendum」の省略形。「2 times a day」「twice daily(1日2回服用)」の意味だ。
そこで「The Academy of Medical Royal Colleges (英国医科大学アカデミー)」は、「Writing letters(手紙の書き方)」のガイドラインを作成し、UKの医者25万人に対して「plain and simple(単純明快)」な英語で書くように求めた。
以下はその一例。
・'dyspnoea' should instead be 'breathlessness':「呼吸困難」は「息切れ」とすべし
・oedema→swelling or fluid:「浮腫」は「むくみ」に
・seizure→fit:発作
・syncope→faint:失神
・acute→sudden or shot-term:急性
・chronic→long-term or persistent:慢性
・cerebral→brain:脳の
・coronary→heart:心臓の
・hepatic→liver:肝臓の
・pulmonary→lung:肺の
・renal→kidney:腎臓の
・paediatric→children's:子どもの
さらに、患者の心を傷つけないように、「stigmatizing words(トゲのある言葉」は使わない。言い方にも注意が必要だ。
・You are diabetic. (糖尿病です)→You have diabetes. (糖尿病に罹っています)
・患者にショックを与えないように、ときには「more non-committal styles (やや婉曲な言い回し)」を用いるように。
"During the examination, the tremor and stiffness in your right arm suggest that you have Parkinson's disease."
[ 診断では右腕に震えと強ばりが認められたので、パーキンソン病に罹患している疑いがあります。]
[ 要は、患者に当てた文書を書くに当たって、(自己本位ではなく)患者本位に考え方を変えること。そして文書を書くことは、治療の一環である、とすることだ。それは、誰にとっても有益。]
" It should make the process more patient-centred, and make them more involved in their care, which will be beneficial for everyone."
医療は決して「doctor-centred (医者本位)」であってはならない。何と簡潔明瞭なことだろう。