医者も悪性、良性の区別がつかないガン:画期的なDNA診断が救う (BBC-Health, April 12, 2018)
ガン (cancers) は早期発見、早期治療が基本という。しかし、これには、いささか矛盾がある。たとえ体のどこかにガン腫瘍が見つかっても、それが悪性なのか、それとも治療の必要のない良性なのか、医者自身が判断できないというのだ。医者本人が分からないのに、患者に対して「どうしますか」と手術の是非の決断を迫る。これでは、患者に対して、医者を越える医学知識を要求するようなものだ。
たとえば、腎臓ガン (kidney cancer) には 3種のタイプがある。ただし、見ただけではほとんど区別がつかない。これまで、ガンが見つかった時点で、タイプ別の違いを判断する「tools (手法)」は、まったく存在しなかった。
・Born to be bad (malignant):悪性
・Benign:良性
・Intermediate:どちらとも言えない(中間的なもの)
1.悪性のガン腫瘍:急速かつ広範囲に増殖するのが特徴で、その勢いが余りにも強いため、ガンが発見された時点で、すでに全身に転移していることが多い。
このタイプのガン腫瘍を腎臓から摘出する手術療法は、薬物療法を遅らせ、かえって、ガンの進行を早めてしまう。
" The 'born to be bad' tumours had rapid and extensive mutations and would grow so quickly they are likely to have spread round the body before they are even detected."
"Surgery to remove the original tumour may delay the use of drugs that can slow the disease."
2.良性のガン腫瘍:悪性の腫瘍とは全く正反対の特徴を示し、その進行は極めて遅いため、患者に支障を来すことはない。「様子見」だけで十分。
"The benign tumours are at all the complete opposite and are likely to grow so slowly they may never be a problem to patients and could just be monitored."
3.どちらとも言えないガン腫瘍:ガン発症初期に、他の部位に一度転移する傾向がある。このため、外科手術による対応が可能。
"the intermediate tumours wee likely to initially spread to just one other location in the body and could be treated with surgery."
そこで「The Francis Crick Institute (英国フランシス・クリック研究所)」の Dr Samra Turajlicらの研究グループは、100人にのぼる被験者の協力を得て、ガン腫瘍の悪性、良性を判断する画期的な「tools (手法)」を開発し、その研究成果を医学雑誌「Cell」に発表した。
ガンが増殖、進化するにつれて、その突然変異体は徐々に姿を変え、やがて、始めのガン腫瘍細胞とは全く違った変異体が、それぞれ勝手に増殖を始める。
Dr Turajlicらの開発した方法は、違った部位から採取したガン腫瘍細胞サンプルについて DNA解析を行ない、ガン腫瘍の細胞分化の履歴すなわち「evolutionary history (進化歴)」を明確にすること。
これによって悪性、良性の特徴や、今後のガンの進展性を把握することができるという。
ガンはガンでも、悪性、良性では全く治療が違う。「tailor treatments (ガン患者のガンの特徴を考慮した最適な治療)」がようやく動き始めた。
問題は、臨床の現場に、いかに早く、この DNA解析手法を採用できるかに掛かっているという。
(写真は添付のBBC Newsから引用)