スマホ型DNA解析器:遺伝子変異、ガンの検出が簡単に! (BBC-Health, January 29, 2018)
手の平サイズの携帯型ヒトゲノム解析デバイス「MiniON」が「Oxford Nanopore」社によって開発された。
すでに、「ヒトゲノム計画 (Human Genome Project) [1990-2003]」によって人間の「全遺伝子情報 (genome)」が全て解読され、この情報は DNA塩基配列で暗号化されていることが分かっている。
DNAの 2重螺旋構造は、A, C, G, Tの 4種の塩基 (bases) の連なりによって構成されるが、これまでの「Short read (ショート・リード)」法と呼ばれるDNA解析では、この鎖を一旦短いパーツにバラバラにし、それをジグソーパズルのように組み合わせて塩基配列が決定されていた。
ところが、「Oxford Nanopore」社が開発した DNA解析では、「鎖状になった DNA配列 (longer strands of DNA)」を微細な「ナノポア (nanopores)」に通して、そのときに塩基 A, C, G, Tの種類によって異なる電気信号を読み取る。その解析精度は 99.5%。これによって、一挙に DNA配列が決定される。
さらに、これまで解読が難しいとされてきた「tips of chromosomes (染色体末端部)」、いわゆる塩基配列が繰り返し畳み込まれた「telomeres (テロメア)」の長さを読み取ることもできる。「telomeres (テロメア)」はガン腫瘍の発生や老化に深く関与しているとされる重要な情報源だ。
もはや、莫大なお金を掛けて、大がかりな装置で患者の「genome (ゲノム)」を解析する時代は過去のものとなりつつある。携帯電話型デバイス「MiniON」は医療現場あるいは家庭でも「通常の医療機器 (routine tool)」として使えるのだ。
Birmingham大学の Nicholas Loman教授は、このデバイスを使って西アフリカで猛威を振るう Ebola (エボラ出血熱) の感染ルートの調査に当たったという。
さて、これで、ヒトの遺伝子情報が簡単に分かるようにはなった。問題はその情報から、どのような遺伝性疾患の発症リスクあるいは遺伝子異常を判断するのかについて、研究が遅れていること。
ただし、今や、ガンや精神疾患などの難病治療に当たっては、DNA解析データを基づいて治療する時代に入ったことは間違いなさそうだ。
なお、研究の詳細は医学雑誌「Nature Biotechnology」に掲載された。
(写真は添付のBBC Newsから引用)