あくびは、なぜ移る?:こんな質問に思わず、大あくび! (BBC-Health, September 1, 2017)
[ 疲れや退屈が原因で、無意識ながら口を大きく開け、深々と息を吸う動作 ]
"Involuntarily open one's mouth wide and inhale deeply due to tiredness or boresome: COD, 12 ed."
と言えば、「yawn (あくび)」。血液中の酸素が欠乏しても起こるとされるが、人前であくびをするのは、礼を欠く。しかし、近くの人があくびをすると、思わず釣られてあくびをしてしまうことは、よくある。
今から 1017年前、清少納言は、このことに気づいて、「枕草子」285段に次のような短い文を書き留めている。
"見ならひするもの 欠伸(あくび)。ちごども。なまけしからぬえせ者。"
つまり、「見ると移ってしまうのが、あくび。幼い子ども。それに未熟でいい加減な人がするものだ」と、清少納言はあくびに対して手厳しい。
さて、Nottingham大学で「cognitive neuropsychology (認知神経心理学)」を専門とする Georgina Jackson 教授らは、この「contagious yawning (人から人に移る欠伸)」に関する最新の研究結果を医学雑誌「Current Biology」に発表した。
Jackson 教授らは、ボランティアの被験者 36名に他人のあくびを見てもらい、釣られてあくびをしそうになったときに、これを我慢するグループと、我慢せずにあくびをするグループの脳の働きを調べた。
すると、あくびの衝動に駆られると、頭の頂上部に位置する「primary motor cortex (一次運動部)」の「excitability (興奮)」が高まることが分かった。
また、脳のこの部分は、「Transcanial Magnetic Stimulation, TMS (経頭蓋磁気刺激法)」によって刺激を与えても「excitability (興奮)」が増し、あくびを誘発する傾向が認められたという。
欠伸(あくび)は、医学的には「echophenomena (反響動作現象)」の1種と捉えられ、あくびと同じように、他人の動作が移って発症する「neural disorder (神経障害)」には、「Tourette' syndrome (トゥレット症候群)」、「epilepsy (てんかん)」、「autism (自閉症)」などがある。
したがって、脳内の「primary motor cortex (一次運動部)」の「excitability (興奮)」を抑え込むことができれば、これらの発症を食い止められるはず。
研究者たちの目下の目標は、TMS を駆使し、どうにかして脳内の神経回路網 (brain networks) に生じたアンバランス (imbalances) を調整すること。これに成功すれば、「non-drug (薬を使わない)」、「personalised treatments (患者個別ごとの治療)」が可能となる。
なお、「あくび」と「共感 (empathy)」との関係について長年研究を続けてきた「SUNY Polytechnic Institute」の Dr Andrew Gallup によると、Jackson 教授らの研究結果は、「あくびの伝染 (yawn contagion)」と脳の「共感処理 (empathy processing)」とは無関係であることを証明するものだという。
ただし、
"We sill know relatively little bout why we yawn."
[ なぜ、あくびをするかについて、ほんの少しだけ知ったに過ぎない。]
(写真は添付のBBC Newsから引用。)