なぜエベレストに登るの?:酸素ボンベを盗むため! (BBC-News, May 25, 2017)
"Why did you want to climb Mount Everest?" [なぜ、エベレストに登りたいのか?]
と問われて、
" Because it's there." [ そこに、その山があるから。]
と答えたのは、イギリスの登山家「George Mallory (ジョージ・マロリー [1886-1924])。
日本人にとって雲の上にそびえる山は、心を浄化させ、崇めるべき神聖な場所であった。しかし、ヨーロッパでは目の前にそそり立つ山々は「征服」せずにはいられない挑戦物だった。(征服とは嫌な言葉だ。)
そして、地球上でもっとも高いとされるエベレスト (Chomolungma) [ 標高8,845m ]にも登山家 (climbers )が押し寄せた。この十数年、エベレストにはまるで観光地のように人が入れ替わり、立ち替わり足を踏み入れる。
そのエベレストで、このところ盗難 (theft) が相次ぎ、まともな登山者の命が危険にさらされている。それも、あろうことか、盗まれるのは、なくなると命を失いかねない(life-threatening)「酸素ボンベ (oxygen bottles)」。
なんとも、登山家は堕落し、山や自然を畏敬する心が崩落し、登山の崇高な精神が滑落したものだ。
酸素ボンベがエベレスト最終アタック前に盗まれると、登山者は登頂を断念し、引き返さざるを得なくなる。なにしろ、天気が急変するエベレストでは登攀スケジュールも登攀ルートも常に変更を余儀なくされるため、酸素ボンベには余裕が欠かせない。それに登山事故の7割は下山中に起きている。下山時に酸素ボンベが不足しては極めて危険となる。なお驚くべきことに、これまで、盗んだ人が捕まったことがないという。
おそらく、準備不足の登山者が生命の危険に遭遇して、他人のキャンプから酸素ボンベを盗むものと考えられるが、標高の高い「The South Col (7,900m)」キャンプなどから登山者にとっては「命綱の酸素ボンベ (life-saving bottles)」を盗んで、ベースキャンプ (base camp) で売りつける人が跡を絶たないのも事実だ。
このような状況を受けて、「登山規則 (mountaineering regulation)」を求める声がネパール政府の観光省 (tourism ministry) 内部からも上がっている。しかし、何しろ、政府の組閣人事が数ヶ月毎に変わるネパールのこと。法規制の目処は全く立っていない。
今シーズン、ネパール政府は400件弱のエベレスト登山許可証を発行し、現在約300人がその頂上を目指してアタック中。残るグループも天気の回復を待って、登山を開始する予定とか。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)