ヒロシのWorld NEWS

世界のニュースを日本語でお届け!

6,000年前に語り継がれた話:グリム童話の源流がここにある (BBC-News, January 20, 2016)

http://ichef-1.bbci.co.uk/news/660/cpsprodpb/FCBB/production/_87799646_87799645.jpg

 「むかし昔、あるところに・・・」で、「昔ばなし」は始まる。「今昔物語」も「今は昔、・・・」が定型だ。その「むかし」とは、どれ位、昔なのか。日本では、相当に昔と言っても、奈良時代から室町時代と考えておけば良さそうだ。

 一方、「昔ばなし」をヨーロッパでは「fairy tales」または「folktales」と呼ぶ。その「fairy tales」とは、元々「妖精 (fairy)の物語」、「信じられない架空の話」の意味だ。
 しかし、一般に知られているグリム童話やフランスの民話は、決して単なる「作り話(fictions)」ではない。歴史を縦糸に、過去の文化・伝統を横糸に織り込んで、入念に仕上げられた言葉の織物であり、無形遺産 (inheritance) だ。

 イギリスの Durham (ダラム) 大学とポルトガルの Lisbon 大学の研究チームが、生物学 (biology) で採用される「系統発生学的な手法 (phylogenetic methods)」を民話の研究に適用し、民話の中に具象化 (embodied) されて取り入れられた言語 (languages)、婚礼儀式 (marriage practices)、政治制度 (political institutions)、物質文化 (material culture)、音楽 (music) などの文化現象 (cultural phenomena) と、人口の流動の歴史 (population histories) との関係を分析した。
 さらに、民話を語り継ぐ民族の祖先が、どこまで、インド・ヨーロッパ語の系統樹(phylogenetic tree) に遡ることができるか、についても調べた。

 その結果に、心は躍る。
 「ジャックとマメの木 (Jack and the Beanstalk)」は、インド・ヨーロッパ語(印欧祖語)が種々の言語に分岐始めた 3,000 BCも昔に遡る。それは、青銅器時代(3,500ー1,000 BC) の初期、すなわち今から 5,000 年以上も大昔のことになる。
 フランスの民話「美女と野獣 (Beauty And The Beast)」やグリム童話 KHM55「ルンペルシュティルツヒィン (Rumpelshtiltskin)」にも 4,000年 の歴史があった。

 鍛冶屋がその知恵で悪魔をやり込める奇怪なグリム童話「鍛冶屋と悪魔 (The Smith and The Devil)」の源流は、6,000 年前に遡る。

"The study said this tale could be traced back to the Proto-Indo-European society when metallurgy likely existed and there was archaeological and genetic evidence of massive territorial expansions by nomadic tribes from the Pontic steppe(the northern shores of the Black Sea)between 5,000 and 6,000 years ago."

[ この研究によると、「鍛冶屋と悪魔」の昔話は、すでに冶金学が存在していたかも知れない「印欧祖語の時代」にまで遡ることができる。さらに、考古学的ならびに遺伝子学的な研究結果が示すところによれば、その昔ばなしは、今から 5,000-6,000 年前の間に、遊牧民によって、黒海沿岸北部に広がるポントス・ステップからヨーロッパへと大々的に広められたと言えよう。]

 グリム兄弟が採取した「Grimms Märchen」は奥が深い。原文で読んで、ドイツ語特有のリズムと言語の歴史を味わってもらいたい。

 なお、この分野に興味のある方には次の一冊を勧める。
・マックス・リューティ著(野村泫訳):昔話の本質、福音館書店、1974

                                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

www.bbc.com