類人猿が教えてくれる睡眠の秘密(BBC-Earth,April 15, 2015)
ぐっすり眠れた朝は,気持ちがいい。でも、人はどうして毎日眠るのか。そもそも人類はその進化の過程で、どのように睡眠を変化させてきたのか。答えはこの記事の中にある。
デューク大学で人類学を専門とするDr David Samson は、オランウータンの睡眠を詳しく調べた。オランウータンは、「霊長目ヒト科」に分類され、人間に近い種として知られている。夜になると木の上にきちんと寝床をつくって眠る(これは類人猿の習性)。その眠る姿勢、眠っているときの体の動きや睡眠時間、眠りの深さなどがこの調査の対象となった。そして、人間とは少し遠縁に当たる種「霊長目オナガザル科」に属するヒヒ(狒々)の睡眠と比較してみた。ヒヒは警戒心が強く、夜、横になって眠ることはない。さて、オランウータンとヒヒのどちらがより十分で質の高い睡眠をとっていたであろうか。
人類の遠い祖先は、中新世(約2300万年~500万年前)の時代に次第に体型を大きく変化させ、およそ1800万年~1400万年前にはその大きな体をしっかりと休ませるために、木の上に寝床をつくるようになったと考えられている。木の上ではしつこい蚊や敵の侵入の心配から解放されてぐっすりと眠れたからである。
人は誰でも眠らないで働き続けると、頭がボーッとしてくる。これは脳機能が低下するためであり、睡眠は脳機能を回復させ、ホルモンの分泌を促すとともに、記憶を強化するために欠かせない。木の上で熟睡することを知った人類の祖先は、飛躍的にその認識能力を高め、熾烈な生存競争で優位に立つことができたと考えられる。
なお、日本では5人に1人(約2,500万人)が不眠の悩みを抱えていて、総人口の5%に当たる約640万人が睡眠薬を服用しているといわれる。もっと睡眠に関心のある方には、次の2冊の一読を勧める。
1.こころの科学-不眠症、第179号、日本評論社 (2015)
2.内山真;睡眠のはなし-快眠のためのヒント(中公新書)、中央公論新社 (2014)
(写真は添付のBBC Newsから引用)