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便潜血検査FOBTの驚き!:大腸ガン、他の致死率の高い病気を予測 (BBC-News, July 17, 2018)

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 毎日、気配りする項目で最優先に置くべきことは、誰にとっても健康に違いない。しかし、なにも神経質に鏡を覗かなくとも、体の調子は子どもでもわかる。熱がでる、体がだるいは黄信号。尿や便に血が混じったら赤信号だ。

 さて、Scotlandの「Ninewells Hospital」とDundee大学医学部が、2000年から2016年にかけてScotland中央東部のTaysideで実施された大腸ガン・スクリーニング (home screening test)の「便潜血検査 (Foecal Occult Blood Test, FOBT)」134,192人分のデータならびに「National Records of Scotland (スコットランド国立公文書館)」データベースを分析した結果、意外な真実が明らかになった。

 FOBTを受けた人の約2% (2,714人)が大腸ガンに関し「陽性 (positive)」と判定され、年齢、貧困度 (levels of deprivation)が増すにつれて、発症リスクが高まり、とくに男性に多い傾向が認められた。
 しかし、驚きは、それだけに留まらない。大腸ガン患者は、なんと、ガン以外の病気で死亡する確率も、他の人に比べて58%も高かったのだ。
 
 死亡率の高い病気は以下のとおり。

・circulatory disease:循環器疾患
・respiratory disease:呼吸器疾患
・digestive diseases excluding bowel cancer:消化器疾患(大腸ガンを除く)
・neuropsychological disease:神経精神疾患
・blood disease:血液疾患
・endocrine disease:内分泌疾患

Scotlandでは、50 - 70歳の男女に対し、2年おきに「便潜血検査FOBT」を受けるように推奨している。しかし、検査を待つまでもなく、血便やなんらかの異常・症状が認められたら、すぐに専門医の診断を受けた方がいい。大腸ガンの発見は早ければ早いほど、治療も楽で、回復も早くなると言われている。

 今回の研究結果によると、FOBTで「大腸ガンの恐れなし」の判定は、他の致死率の高い病気のリスクも低いことを示す。なお、研究の詳細は、医学雑誌「Gut」に発表された。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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Apexホテルの高級アイスクリーム・バーガー:夏バテにいかが? (BBC-News, July 12, 2018)

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 うだるような暑さの夏。あなたは、何を食べたいですか。
 スコットランド人はジョーク好き。7月15日(日)の「National Ice Cream Day」に、Edinburghの「Apex Grassmarket Hotel (エイペックス・グラスマーケット・ホテル)」は、ちょっと変わった一品を朝食メニューに加えた。名付けて「square sausage ice-cream (スクェア・ソーセージ風アイスクリーム)」。

 スコットランドの伝統的な朝食と言えば、ふわふわパンの「brioche (ブリオッシェ)」に四角い薄切りソーセージ「square sausage (スクェア・ソーセージ)」だ。
 ところが、Apex Grassmarket HotelのシェフVladimirs Kurrsは、酪農会社「Gren Urr」の強い要請を受けて、「brioche (ブリオッシェ)」の中に挟む「square sausage」を、「ice cream」に替えた。
 
 伝統の味を活かすように、そのアイスクリームの上には、見た目も風味もソーセージ・ソースとほとんど変わらない特製シロップ「toffee (タフィー)」をたっぷり塗って、パンの表面には「icing sugar (粉砂糖)」を振りかけてある。

 もちろん、ホテルでは本物の「square sausage」も賞味できる。こちらは、「Castle Douglas」の食肉生産会社「Grierson Brothers Butchers」から取り寄せた最高級の挽き肉を使って調理されていると言う。
 なお、「square sausage」とは、挽き肉に「rusk (ラスク)」と「spices (スパイス)」を混ぜて作られるスコットランド伝統のソーセージのこと。

 本物の「square sausage」を食べても良し、本物と「square sausage ice-cream (スクェア・ソーセージ風アイスクリーム)」」を食べ比べても良し。
 ただし、残念なことに、「Apex Grassmarket Hotel」の、この特別アイスクリームは、「National Ice Cream Day」だけの限定メニュー。
 
 さらに、その特別メニューは数量も限定され、完売次第、メニューから外されるとのこと。

 今年はすでに終了した。Apexホテルの特別メニュージに興味にある人は、1年ほど待つ必要がある。昔から言われているように、珍味を食するのは道楽の極みで、かつ命がけだ。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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「心を失う病気」認知症:その驚くべき性差別! (BBC-Future, July 12, 2018)

(Credit: Getty Images)

 ベートーベンは20代後半に「聴力」を失って、苦しんだ。しかし、もしも、人が「心」をなくしてしまったら.....。
「dementia (認知症)」の語源はラテン語の「dement」。「心を失う (out of one's mind)」という意味だ。認知症とは、記憶・認知機能に支障のある病気一般を指し、その中にはアルツハイマー病 (Alzheimer's)も含まれる。

 世界で認知症に苦しんでいる人は、5,000万人以上。しかも患者数は、今後、確実に増加すると予想され、2030年には50%増の7,500万人、2050年には163%増の1億3,150万人に達すると推定されている。

 認知症の「男女格差 (gender gap)」は激しい。なぜか、女性に多く発症するのだ。USでは、認知症患者の 2/3が女性だ。England, Wales, Australiaでも死亡原因のトップは、女性に限ると、心臓病を抜いて認知症

 それは、なぜなのか。考えられる原因として、以下の5項目が挙げられる。

1.老化に伴って「late-onset Alzheimer's (晩期発症型アルツハイマー病)」の発症リスクが高まる。女性は男性よりも長寿であるため、必然的に女性の認知症患者が多くなる。

2.「depression (うつ病)」、「multiple sclerosis (多発性硬化症)」、「surgical menopause (外科閉経)」、あるいは「pre-eclampsia (子癇前症)」などの「pregnancy complications (妊娠合併症)」はアルツハイマー病の発症につながる危険因子。これらの因子は、女性が高齢期に入ったときに「cognitive decline (認知低下)」を招く。

3.高齢者の女性は介護 (caregiving)を受けることが多い。介護を受けると、アルツハイマー病の発症リスクが高まる。
 
4.若い女性は、女性ホルモン「oestrogen (エストロゲン)」によって脳の健康が保護されている。しかし、ある年齢を過ぎると、エストロゲンの分泌が減少するため、高齢期の女性が、一旦、アルツハイマー病を発症すると、その症状は急速に悪化する。

5.女性と男性では「neurospsychological differences (神経心理学的な違い)」がある。アルツハイマー病の初期の段階の女性患者は、迷路図を使った「diagnostic exams (診断テスト)」で、「マイナス」と誤認判定され、適切な治療が遅れてしまう。In countries including England and Australia, dementia is the leading cause of death for women (Credit: Getty Images)

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 そもそも、アルツハイマー病はなんらかの原因で脳神経細胞が萎縮する病気だ。患者の脳には2種類の毒性タンパク質「アミドβタンパク質」、「アミドτタンパク質」が蓄積されることでも知られる。したがって、この2つのタンパク質が「biomarker (バイオマーカー)」となる。これを血液検査でチェックし、アルツハイマー病の進行度が把握される。しかし、血液中のβ、τタンパク質濃度が女性と男性で同じ値でも、なぜか、アルツハイマー病の症状は女性の方が重くなる。

 なぜ、女性に認知症アルツハイマー病が多く、また、これが急速に悪化するのか。研究はまだ始まったばかりだという。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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「クマのプーさんマップ」原画:あの「森の地図」6,400万円で落札! (BBC-News, July 10, 2018)

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 挿し絵は、読書を10倍も、100倍も楽しくしてくれる。ページをめくって、すぐに目に飛び込む挿し絵には、読者を一瞬にして本の世界に引き込む「凄さ」がある。

・「Lewis Carroll (ルイス・キャロル)」の「Alice's Adventures in Wonderland (不思議の国のアリス)」の場面を心憎いばかりに描いた「Jon Tenniel (ジョン・テニエル)」。

・「Roald Darl (ロアルド・ダール)」の「The Twits (ろくでなしの二人)」、「The Enormous Crocodile(どでかいクロコダイル)」などの作品も、Quentin Blake (クェンティン・ブレイク)の絵がなかったら、肉料理は肉料理でも、スパイスに欠けた肉料理のようなもの。

吉川英治の「宮本武蔵」には、「矢野橋村・石井鶴三」の挿し絵がなくては、武蔵の「生きざま」が具体的に見えてこない。

 そして「Winnie-the-Pooh (クマのプーさん)」、「The House at the Pooh Corner (プー横町にたった家)」に登場するクマ、小ぶた、トラ、カンガルー、ロバなどのぬいぐるみは、「E. H. Shepard (シェパード)」によって生命の息吹(いぶ)きが与えられた。

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 「クマのプーさん」の作者「A. A. Milne (ミルン)」は、1882年、Londonの高級住宅街「Hampstead (ハンプステッド)」に生まれる。Cambridge大学の数学科を卒業した後、雑誌「Punch (パンチ)」の編集の仕事を続けていたが、「Christopher Robin」が生まれたことが切っ掛けとなり、「Winnie-the-Pooh」を執筆し、世に出した。著名な挿し絵画家「E. H. Shepard」との巡り合わせもあって、この本は大成功を納める。

 その後、Disney (ディズニー)が登場人物のキャラクターをさらに強調、発展させたアニメ映画「Winnie-the-Pooh And The Honey Tree (クマのプーさんと蜂蜜の木)」(1966)を制作し、その人気は揺るぎないものになった。

 Shepardは、クマのプーさんとその仲間たちが活躍した舞台を1枚の地図に描き、これを本の「とびら絵」にしていた。地図の下には、手書きで「DRAWN BY ME AND MR SHEPARD HELPED (シェパードさんに手伝ってもらって、ぼくが描く)」とある。
 しかも、いかにも子どもが書いたように、「nice for picnicks」、「100 aker wood」などと、わざと単語の綴りを間違えてある。
 その原画が、7月10日(火)、「Sotheby's (サザビーズ)」のオークションで、挿し絵としては過去最高額の£430,000 (約6,400万円)で落札された。

 なお、「Winnie-the-Pooh」に興味のある方には、次の2冊をお薦めする。

・A .A.ミルン作・石井桃子訳:クマのプーさん、プー横町にたった家、岩波書店、1962
・A. A. Milne:The Complete Tales of Winnie-the-Pooh、Dutton Children's Books, 1994

 上の英語版は、1926年初版の「Winnie-the-Pooh」では白黒だった挿し絵を、Shepardが1973年にカラーに手直しした後に、出版されたもの。その絵は、目を見はるほどきれだ。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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タイム・マシンは作れるの?:Einsteinの相対性理論では可能! (BBC-Science & Environment, July 11, 2018)

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 「タイム・マシン (The Time Machine, 1895)」はUKのSF作家 H.G. Wells [1866-1946]の代表作の1つ。主人公がタイム・マシンに乗って未来に降り立つと、そこは AC80,701年の地球で、平和に見えても、おぞましい世界が隠されていた。
 人類の未来は、こんなものかも知れないと、読者をゾッとさせる Wellsの名作だ。

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 さて、現実的な話に移る。
 では、実際にタイム・マシンは作れるのか、あるいは、そもそも理論的に過去や未来に行けるのか。この質問に対する答えは「可能性あり」。

 「Albert Einstein [1879-1955] (アインシュタイン)」の相対性理論によると、この宇宙は、3次元空間に時間 (time)が密接に結びついた「4次元時空 (four dimensions of space-time)」であり、過去、現在、未来は全て「実在 (reality)」し、宇宙は絶対的かつ不変的なブロックとして捉えることができる。
 この宇宙のブロックモデルに従うと、通常の時間の概念は、人間が「reality (現実)」を正当化するために作り出した「illusion (錯覚)」ということになる。
 

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 それでは、現在から過去、未来にワープ (warp)するには、どうすればよいか。Einsteinは、時空 (space-time)には「wormhole (ワームホール)」が存在し、時空の1点から別の点につながるトンネル空間になっていると考えた。ただし、それは宇宙のどこにでも見つかるわけではなく、ときに果てしない宇宙のかなたに存在する可能性もある。
 また、運良く、wormholeを抜けても、どの時空の点にたどり着くかは、保障なし。

 さらにやっかいなことに、wormholeは不安定で、すぐに消えてしまう可能性もある。したがって、タイム・マシンを作って時空の旅に出かける際には、まず、人工的に「wormhole (ワームホール)」をつくり出し、そのトンネルを通って別な時空ポイントにワープする。その間、トンネルがつぶれないように膨大なエネルギーを与え続ける必要がある。
 このとき、未来人が利用すると考えられるエネルギーは、宇宙の「dark energy (ダーク・エネルギー」だ。

 宇宙の膨張は、重力だけでは説明できない。宇宙には「negative energy (負のエネルギー)」の「dark energy」が溢れていて、それが「anti-gravity (反重力)」を生みだし、急激な膨張を続ける原動力となっていると考えられている。
 
 いつか、未来人が、その dark energyを自由に使いこなせるようになったとき、タイム・マシンも完成に近づくはずだ。

 なお、USの Connecticut大学 Ron Mallett教授は、レーザー光線のループ空間に強力なエネルギーを与えて、その空間にゆがみを発生させ、時間のゆがみをつくり出す装置を完成させた。Mallett教授の夢は、タイムマシンをつくって過去に行き、亡くなった父親に再会することだそうだ。
 ただし、現在の装置では、せいぜい Einsteinの時空理論を証明するだけに留まることだろう。

 また、過去、現在、未来がすでに現実として時空に存在するとすれば、たとえ、Mallett教授が過去に行けたとしても、その「過去の現実」を書き換えることはできない。したがって、父親を救うことはできないことになる。

 しかし、いずれにせよ、人類が時空旅行に成功するまでには、気のとおくなるような科学の発展と、Einsteinのような天才が何人も出現する必要がありそうだ。

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                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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こんにちは地球の皆さん:わたしが惑星の赤ちゃんよ! (BBC-Science & Environment, July 1, 2018)

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 ケンタウルス座( Centaurus)の T タウルス型星 PDS 70。この星は、地球から 370光年の宇宙のかなたに浮かび、質量は太陽の0.82倍で、太陽と同じ主系列星 (dwarf stars)に分類される。宇宙に誕生して、まだ1,000万年も経たない若い恒星だ。

 その恒星に、「原始惑星 (protoplanet)」PDS 70bが生まれた。その映像がドイツの「Max Planck Institute of Astronomy (マックス・プランク天文学研究所)」によって世界で始めて捉えられ、公開された。

 原始惑星(惑星の赤ちゃん)は生後 500万年 - 600万年、大きさは太陽系の木星の数倍。地表温度は1,000℃を越え、大気はおそらく厚い雲で覆われていると考えられている。その原意惑星は、太陽系の天王星 (Uranus)と同じように、恒星 PDS 70から遠く離れて周回するため、軌道を 1周するのに118年も掛かるという。

・「How are planets born? (原始惑星はどうのように誕生するのか)」

 現在、研究者の間で「もっとも広く指示されている理論 (the most widely accepted theory
)」によると、恒星 (stars)の形成に逸(はぐ)れたガス・塵 (gas and dusts) が円盤状をなして、恒星の周りを周回するうちに、衝突と合体を繰り返し、微小天体の「微惑星(planetesimal)」になる。それが、大きく成長するにつれて、引力も増大し、周りの「debris (岩屑)」、ときに、同等サイズの天体をも取り込んで、質量が増え続ける。
 その後、原始惑星は、恒星を周回する軌道を安定させ、惑星 (planets)の仲間入りを果たすのだ。

 したがって、原始惑星 PDS 70bを観測することは、かって太陽系の惑星が辿った誕生・成長プロセスの解明につながる。

 さて、今後、何億年かが過ぎたとき、この惑星には、どんな生命が誕生するのだろう。少なくとも平和を望む生命体であってほしい。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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マジック・マッシュルーム:「うつ病」重症患者の脳をリセット (BBC-Health, July 1, 2018)

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1.幻覚剤の研究が遅れた理由

 1960年代、若ものは、映画「いちご白書 (Strawberry Statement)」に涙し、学生運動にのめり込んだ。そして「counterculture (体制批判文化)」も生まれた。
 さらに、その時代背景にあって、どういうわけか、hippie (ヒッピー), musicians (ミュージシャン), celebrities (セレブ)を中心に、LSD, mescalin (メスカリン), psilocybin (サイロシビン)などの「幻覚剤(psychedelic drugs)が、巷 (ちまた) に急速に広がり始める。

 US政府は、社会が「moral panic (道徳的なパニック)」に陥ることを恐れ、1968年、この種の幻覚剤を非合法化した。追い打ちを掛けるように、その数年後の1971年、「向精神薬に関する条約 (Convention on Psychotropic Substances)」によって、上述の幻覚剤はすべて「Schedule 1 drugs」とされ、、国際的に禁止された。加えて、うつ病に対する幻覚剤の治療効果にも「No」の判断が下された。

 その時点で、うつ病 (depression)治療薬として進められた幻覚剤の研究は、完全に干ぼしにされ、1950-1960年代の、1.000件を越える幻覚剤に関する研究論文も忘れ去られた。

2.マジック・マッシュルーム研究のルネッサンス
 
 幻覚剤の研究は政府の許認可が必要になった。それでも、細々と小規模ながら幻覚剤に関する研究は続けられ、症状が悪化して処置無しの「depression (うつ病)」、「addiction(中毒、依存症)」、「PTSD (心的外傷後ストレス障害)」などの「精神障害(mental health disorders)」には、幻覚剤が効果を示すことは、研究者の間で知られていた。

 幻覚剤の研究の復活「renaissance (ルネッサンス)」に火を付けたのは、USのJohns Hopkins大学の研究チームだった。2000年代になって、マジック・マッシュの幻覚成分「psilocybin (サイロシビン)」には、命にかかわるほどのガンに冒された患者の80%に対し、うつ病の症状をやわらげる働きがあったと発表した。また、この幻覚成分を「cognitive behavioural therapy (認知行動療法)」と併用すると、従来の禁煙治療に比べてはるかに喫煙習慣から逃れることができるとする結果も発表。
 
 そして、2009年、London大学「Imperial College London」のDr Robin Carhart-Harrisらの研究チームは、うつ病患者の脳が「psilocybin (サイロシビン)」によってどのような影響を受けるのかを明らかにするために、「CT scanners (スキャナー)」を使った研究に着手。2017年に、その研究成果の1つが医学雑誌「Science Reports」に発表された。

 その論文によると、psilocybin (サイロシビン)は、脳内で恐怖・不安などの情緒を司る「amygdala (扁桃体)」と、脳内の神経活動を同調させる働きをもつ「default-mode network (デフォルト・モード・ネットワーク)」に作用して、ほとんど治療不可能(untreatable)なまでに重症化したうつ病患者の心から、頑(かたく)に凝り固まった自己破壊的な思考を一掃し、気分を晴れやかにしてくれるという。

 「暗い考え方 (beliefs)」も、「思い込み (assumptions)」も、「中毒 (addictions)」までもがきれいさっぱりなくなり、脳は、まったく新しい「プラス思考 (healthier way)」に再構成 (recalibrale)されるのだ。

3.幻覚剤のリスク

 ただし、「幻覚剤はリスクを伴わないわけではない(Psychedelics are not without risks.)」という。
幻覚剤それ自体に毒性はないと考えられているが、ときに「bad trips(恐ろしい幻覚症状)」に苦しんだり、薬量のコントロールを失って危険に陥る可能性もある。
 また、すでに罹患している「心の病 (mental health problems)」を悪化させることも否定できず、うつ病の発症リスクを抱えた人には「psychotic reaction (精神病性反応)」を招きかねない。

 しかし、今は、何よりも、まず、psilocybin(サイロシビン)が安全であることの「evidence (科学的証拠)」が求められている。

4.いつ頃、うつ病患者に使えるようになるか

 King's College LondonのDr James Ruckerによると、たとえ、今後の大規模臨床試験で、psilocybin (サイロシビン)の安全性、有効性が確認されても、この薬が医療現場で処方されるようになるまでには、少なくとも5年、おそらくはそれ以上の歳月が掛かりそうだという。その理由は

"The process for getting drugs approved is notoriously slow, expensive and bureaucratic."
[ 新薬の認可プロセスは、悪名高いのろさに、高額の経費を要し、官僚的 (お役所仕事)になるためだ。]
                   (写真は添付のBBC Newsから引用)

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