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白い肌に桜咲く:「賢者の石」を探して (BBC-Science & Environment, April 7, 2016)

http://ichef.bbci.co.uk/news/872/cpsprodpb/17658/production/_89123859_m3750139-generations-spl.jpg

 女性の真白い肌に、桜の花を散らしたような、細い血管を無数に張り巡らしたような鉱石がある。それは銅を金に変え、人をして、不老不死にする不思議な石と信じられた。西洋では「賢者の石 (philosophers' stone)」と呼ばれ、古代中国では「辰砂 (しんしゃ)」と呼ばれた。
 これを石臼で細かく砕いて熱すると、金属でありながら、水のように流れる水銀が現われる。紀元前 200 以上も前に、秦の始皇帝は、この天界の水かとも思われる水銀から、不老不死の妙薬「仙丹」を作らせて飲み、かえってその寿命を縮めたと伝えられる。

 さて、現代医学がこの不老不死の解明に挑戦する。科学者が目下注目するのは「リチウム (lithium)」。リチウム電池の普及で、一般によく知られるようになった元素だ。

 これまで、リチウム塩 (lithium salts)」が強壮剤 (health tonic) として処方され、痛風(gout) や偏頭痛 (migraines) の治療薬として使用されることもあった。近年、とくに、リチウムは「双極性障害 (bipolar disorder)」患者の「気分安定薬 (mood stability medicine)」として処方され、記憶障害 (memory impairment) の治療にも有効と考えられている。

 London大学「The UCL Institute of Healthy Ageing」の Linda Partridge 教授らは、このリチウムを「ミバエ (fruit flies)」に低用量で投与し、その寿命を 16 %も伸ばすことに成功した。
 リチウムが脳の神経細胞で実際にどのように働くのかについては、十分解明されていないが、おそらく、GSK-3 すなわち「グリコーゲン合成酵素キナーゼ - 3  (glycogen syn-thase kinase -3)」の情報伝達の機能をブロックするのでは、と考えられている。そのメカニズムが、生命の寿命に関係しているのだろうか。

 Partridge 教授らは、次の研究段階として動物実験に挑戦し、最終的には、人間の臨床試験にこぎ着けたいとする。
 ただし、リチウムは、処方の適量の見極めが極めて難しい薬剤だ。用量が少しでも多すぎると、「強い副作用 (serious side-effects)」が現われる。

 このように、鋭利な刃物のように、取扱が難しいリチウム。果たして、人に対して最適な量と、その処方方法を見つけ、人の寿命を延ばすことができるのか。

 人類の「不老不死」、「賢者の石」探しの飽くなき挑戦が続く。

                                (写真は添付のBBC Newsから引用)

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