握力:手のひらが「運命の秘密」を握る (BBC-Health,May 14, 2015)
「箸より重い物を持ったことがない」とは、「ぜいたくに、大切に育てられ、汗を流して働いたことがない」、喩えとか。「でも、お坊ちゃま、車のハンドル握れる力は、ございますの? 健康は大丈夫?」
表題の記事は、健康チェックの革新的な方法が見つかったという話題。その方法とは握力の測定。
カナダMcMaster大学のDr Darryl Leongを含む国際共同研究チームが、世界14カ国、約14万人を対象とした大規模な健康調査を実施した。この研究のユニークな点は、調査項目(年齢、血圧、肥満度、コレステロール値など)に「握力(grip strength)」が含まれていること。
調査データをまとめると、驚くべき結論が現われた。「握力は、血圧よりも正確な健康バロメータである」。すなわち、「握力の値で病気のリスクを評価できる」という画期的な結論だ。
握力は年をとると弱くなる.具体的なデータがある。
・20代のイギリス人女性の握力(平均値)約34kgは70代になると約24kgに減少
・イギリス人男性は、20代から70代にかけて、その握力は約54kgから約38kgに減少
これが標準的な握力の変動パターンだ。しかし、この「標準値」に比べて、数値がかなり低い、あるいは急激に握力が弱くなった人には、注意が必要。
統計データとその解析結果は苛酷な運命を浮き彫りにする。
握力が標準値よりも5kg低いとき、
・早死の確率(odds)が16%上昇
・致命的な心臓病の確率が17%上昇
・脳卒中の確率が9%上昇
さらに握力が5kg下がると、その発症確率は2倍に跳ね上がる。
握力は血圧に比べて、短時間で、簡単に、安価な器具で測定できるため、今後、医療関係者に、歓迎されそうだ。ただし、なぜ、握力が心臓病あるいは循環器系疾患と深く関わっているのかは、明らかにされていない。「動脈硬化が筋力を弱めているのでは」、との見方もある。また、「筋力を強化すれば、病気のリスクを軽減できることになるか」についても、今後の研究に待たなければならない。
なお、研究結果は、医学雑誌「The Lancet」に発表された。
(写真は添付のBBC Newsから引用)