ヒロシのWorld NEWS

世界のニュースを日本語でお届け!

ガン免疫療法の強力な助太刀:それは腸内細菌だった! (BBC-Health, November 3, 2017)

https://ichef.bbci.co.uk/news/800/cpsprodpb/8D5C/production/_98588163_gettyimages-109726331-1.jpg

 暗く (murky)、体の奥深い腸 (gut) の中で、数兆の微生物 (microbe) が、人の体を感染症 (infectious diseases) から守り、ガン (cancers) と戦う「免疫システム (immune system)」に助太刀していた。
 なかでも、人類にとって強力な味方は、真正細菌の「Akkermansia muciniphia (アッカマンシア・ムシニフィラ)」、「Faecalibacterium (フィーカリバク テリウム)」、「Clostridiales (クロストリディアレス)」などだ。

 この事実は、「免疫療法 (immuotherapy)」に取り組むフランスの「The Gustave Roussy Cancer Campus」の研究チームが肺ガン・腎臓ガンの患者 249名に対して、また Texas大学「MD Anderson Cancer Center」の Dr Jennifer Wargoらの研究チームが、進行したマラトーマ(黒色腫)患者 112名に対して実施した「腸内細菌 (gut bacteria)」の検査結果から明らかにされた。なお、いずれの研究の詳細も「Science」に掲載中。

 さらに、これらの善玉菌「beneficial bacteria」が腸内に住み着いていると、「ガン死滅免疫細胞 (cancer-killing immune cells)」が増殖することも確認され、また、動物実験ながら、この、人の善玉菌を、マラトーマに冒されたマウスの腸に「trans-poo-sion (便移入)」させると、ガンの進行が抑制されることも分かったという。

 このことは、安易に抗生物質 (antibiotics) を服用して、腸内の「microbiome (微生物叢)」を破壊すると、とんでもない「しっぺ返し」があることを意味する。
 とくに、ガン治療の「免疫療法 (immunetherapy)」では注意が必要だ。歯科医が「歯牙感染 (dental infection)」対策として抜歯治療後などに渡す抗生物質は、せっかくの「助太刀善玉菌」を殺して、免疫力を弱体化させ、逆に、ガン腫瘍 (tumours) の増殖を促しかねない。

 腸内の「微生物叢(そう)」は、ガンに限らず健康全般 (general health) の「game-changer (ゲーム・チェンジャー)」であり、人間の健康維持に極めて重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。

 Dr Wargo らは、今後、ガンの治療中に、これと平行して腸内の微生物叢を改善し、その治療効果を高める臨床試験に取り組む予定だ。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

このヒトも「森の人」、でも別のヒト:類人猿の仲間が増えた! (BBC-Science & Environment, November 2, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/736/cpsprodpb/C272/production/_98587794_mediaitem98587675.jpg

 「Edgar Alan Poe (エドガー・アラン・ポー、1800-1849)」はギャンブル好きで大酒飲み。しかし、その怪奇に満ちた短編推理小説「The Murders in the Rue Morgue (モルグ街の殺人)」のストーリーの展開には、度肝を抜かれる。何と犯人は、檻から逃げ出した「猩猩 (しょうじょう)」。つまりヒト科「orangutan (オランウータン)」だった。

 「orangutan」は「orang-utan」とも書かれ、「orang (man)」と「utan (wood)」の合成語。Malay (マレー語)で「森の人」の意味だ。1631年、東インド駐在のオランダ医師 Bontius によってヨーロッパに紹介されたのが、英語の初出とされる。その後、「orangutan」は狩りの対象となり、ヨーロッパ、アメリカ大陸で珍獣として飼われたり、見せ物にされた。さらに生息域に広がった森林伐採も重なって、この数百年の間に個体数は急減した。

 オランウータン属「Pongo」の仲間は、これまで「Sumatran orangutan (スマトラ・オランウータン)」と「Bornean orangutan (ボルネオ・オランウータン)」の 2種類だけと考えられてきた。
 ところが、1997年、スマトラ島の南タパヌリ (Tapanuli) の森林で発見されたオランウータンは、科学者の頭を悩ませた。どうやら、このオランウータンは違う種のようだというのだ。
 
 そして、発見から 20年が過ぎた。
 Zurich 大学の Michael Krützen 教授らと Liverpool John Moores 大学の Serge Wich教授らならびに「The Sumatran Orangutan Conservation Program (スマトラ・オランウータン保護プログラム)」メンバーの研究チームは、研究成果を科学雑誌「Current Biology」に発表し、その論文で、問題のオランウータンは新種であることを明らかにした。新種は「Tapanuli orangutan (タパヌリ・オランウータン)」と呼ばれることになった。

 この新種のオスの「独特な啼き声 (signature calls)」を音響学的に分析すると、他の2種とは「subtle differences (微妙な違い)」があり、その頭蓋骨 (skulls) にも「anatomical features (解剖学的な特徴)」があった。さらに DNA解析すると、遺伝子に「peculiarity (特異性)」が認められた。進化の過程で、約 7万年前に、ボルネオ・オランウータンから分化したと判断されるという。
 現在の生息数は約 800。IUCN (国際自然保護連合のレッド・リストには「Critically Endangered Species (絶滅危惧種IA類)」と登録され、「Zoological textbook (動物学の教科書)」に、早速、この新種が書き加えられることになる。

 これで、「great ape species (類人猿)」は次の 7種になった。

・Chimpanzee
・Bonobo
・Western gorilla
・Eastern gorilla
・Bornean orangutan
・Sumatran orangutan
・Tapanuli orangutan

 なお、「Edgar Alan Poe」と「江戸川乱歩(1894-1965)」は発音が「微妙に違う」。しかし、どちらもヒト科ヒト属の 「Homo sapiens」だ。
 

                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

たった数日の寝不足で脳が狂い出す:そして「心の病」発症! (BBC-Health, November 1, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/768/cpsprodpb/4B87/production/_98553391_restless_q.jpg

 『かって、ナチスは、反対するものを何日も「眠らせない」拷問で苦しめた』と、何かの本で読んだことがある。これは身の毛のよだつような話だ。

[ 意図的であれ、何であれ、睡眠時間を削ると、それが体に深刻なダメージを与えることは、これまでの多くの研究で明らかにされている。]
"Lots of studies have shown that cutting back on sleep, deliberately or otherwise, can have a serious impact on our bodies."

  数日間、よく眠れない日が続くと、血糖値のコントロールが効かなくなって過食し、DNAにも混乱が生じる。
 数年前、BBC「Trust Me I'm a Doctor」は Surrey大学と共同で、ボランティアの睡眠時間を 1日 1時間短縮する実験をした。すると、その実験を1週間続けただけで、「炎症 (inflammation )」や「糖尿病」に関与する遺伝子 (genes) など 500ヶの遺伝子(genes) に異常が現われることが分かった。

 では、睡眠不足のダメージは体だけに留まるのか。メンタルヘルス (心の健康) には影響しないのか。この疑問に答えるため、BBC「Trust Me」は、Oxford大学の睡眠科学の専門家 Ms Sarah Reeveらの協力を得て、再度、「睡眠不足とメンタルヘルスに関する小規模実験」を実施した。ボランティアの被験者は 4人。いずれも、日常、十分に睡眠が取れている人ばかり。実験は6日間行なわれ、始めの 3日間は思い通りに睡眠をとってもらい、残る 3日間では睡眠時間が4時間に制限された。
 睡眠中には、被験者の体調が自動的に記録され、その様子もビデオで録画された。さらに、毎日「psychological questionnaire (心理学的なアンケート)」に答えてもらい、「気分・情動 (mood or emotions)」の変化も調べたという。

 さて、その結果だ。寝不足が、わずが 3日間続いただけで、

・anxiety (不安神経症)
・depression (うつ病)
・stress (ストレス)
paranoia (偏執症):批判に曝されているなどの妄想
・feelings of mistrust about other people (他人に対する不信感)

などの症状が増えたのだ。

 この調査結果をもとに、さらに大規模な「randomaised controlled trial (ランダム化比較試験)」が実施された。イギリス全土から、睡眠問題を抱える学生3,700人以上を募集し、その被験者全員をランダムに「Online CBT(Cognitive Behavour Therapy: 認知行動療法」グループ」と「standard advice (標準的なアドバイス)」グループの2組に分けて治療を開始した。
 すると、「online CBT」の「six sessions」を受講した学生は 10週間後に「insomnia (不眠症)」が半減するとともに、うつ病、不安神経症、偏執症、幻想(hallucinations) などの症状も大幅に改善した。

 Oxford大学の Daniel Freeman 教授は、その理由を次のように説明する。

"We have more negative thoughts when we're sleep-deprived and we get stuck in them."
[ 眠れないでいると、どんどんネガティブな考えに陥り、そこから抜け出せなくなってしまうものだ。]

 ただし、数日間、寝不足が続いたからと言って、すぐに「心の病」になるわけではないが、その発症リスクは高まる。

 そして、Freeman教授は、次のようにも述べる。
"Making $60,000 (£48,400) more in annual income has less of an effect on your daily happiness than getting one extra hour of sleep a night."

[ たとえ年収 $60,000 (約684万円) 越える報酬をもらったところで、睡眠時間を1時間増やして得られる日常の幸福感には及ばない。]

"So, sleep well.”
[ だから、よく寝ることだ。]

これが、この記事の著者「Dr Michael Mosley」の最終結論。

                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

心臓のオペ(手術)は午前を避けて!:合併症のリスクが高まる (BBC-Health, October 27, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/736/cpsprodpb/D6A5/production/_98494945_gettyimages-593305618.jpg

  心臓の手術 (heart surgery) と聞いただけで気を失ってしまいそうになる。しかし、どうしても、それが必要なときには、午前中のオペ (oprations ) は避けて、午後に回した方が無難。その理由を医学的に説明する論文が「The Lancet」に発表された。

 フランス「Institute Pasteur de Lille (リール・パスツール研究所)」の Bart Staels 教授らの研究チームは「心臓弁置換 (heart valve replacement)」の手術を受けた 596名の患者に対して、手術後 500日以内に発症した「合併症 (complications)」を調べた。なお、596名の半数は、午前中に手術を受けるようにランダムに割り当てられ、残る 298名はランダムに午後の手術に回された患者だった。

 すると、手術後に「heart attack (心臓発作)」、「heart failure (心不全)」などの合併症を発症し、あるいは死亡した患者の割合は、午後の手術組と午前と手術組では、以下のように 2倍の差があった。

・54人(18%):Morning surgery
・28人( 9%):Afternoon surgery

 さらに、肥満 (obesity)、2型糖尿病 (type 2 diabetes) の患者は、手術後の合併症の発症リスクが高いことも明らかにされた。

 心臓の手術中には、心臓に流れる血液を抑制するため、心筋 (heart tissue) に大きなストレスの負担が掛かる。しかし、人間の体の全ての細胞(cells)には「circadian rhythm (概日リズム)」すなわち「体内時計 (body clock)」があり、細胞の機能の働きは、午後に最高潮に達するようにセットされている。午前と午後の手術では、心臓の快復力が違うのだ。

 この事実を裏付けるのは、プロの運動選手が自己最高記録を達成する時間帯は午後に集中すること、また、逆に、心臓発作や脳卒中の発症リスクは午前中に高くなることなどだ。

 また、Staele 教授らは、患者の「cardiac tissue (心筋)」サンプルを DNA解析し、287の遺伝子 (genes) に「概日リズム」が存在することを突き止めた。
 目下、Staele 教授らは、心臓手術以外の外科手術にも、この細胞の概日リズムが影響を与えているのかについて研究中。

 この研究結果を確認するためには、さらに大規模な研究が必要とされる。しかし、今の段階で、手術の必要性が「non-urgent (切迫)」していなければ、細胞の機能リズムに合わせた「午後のオペ」が無難。

 なお、この1編をまとめるに当たって、以下の記事も参考にした。読者の皆さんには読み比べることを勧める。

・The guardian
「Afternoon heart surgery has lower risk of complications, study suggests」

                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

けむりモクモク、気象は乱れ、大地が水没:人類危機一発! (BBC-Science & Environment, October 30, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/904/cpsprodpb/1009A/production/_98509656_gettyimages-859523234.jpg

 地球の大気中の CO2濃度が 80万年前のレベルに達した。
 「世界気象機関 (The World Meteorological Organization, WMO)」が世界 51ヶ国の「温室効果ガス (greenhouse gases)」の CO2, CH4 (methane), N2O (nitrous oxide [亜酸化窒素])などの観測データを分析し、「WMO Greenhouse Gas Bulletin 2016, No.13 (WMO温室効果ガス年報)」にまとめて、2017年 10月 30日に発表した。

 その報告書によると、大気中の CO2増加量は過去10年間の平均増加幅に比べて 50%も跳ね上がり、2015年の 400 ppmから 2016年には 403.3 ppmとなった。この CO2の急激な増加幅は、過去 30年間で最大。原因は、人間の生産・消費、運輸などの活動(human activities) に伴う CO2排出量に加えて、赤道付近のアメリカ大陸の海水温度が高くなる「エル・ニーニョ現象 (El Niño weather phenomenon)」が重なったためと考えられている。「El Niño」は「droughts (干ばつ)」をもたらし、植物や木々の CO2吸収力を弱めるからだ。

 2016年の CO2増加率は今から 1万年前の「Last ice age (最終氷期)」の末期に比べて約 100倍。その結果、現在の CO2濃度の大気の状態は、300万年から 500万年前の「mid-Pliocene Epoch (鮮新世中期)」の地球の状態にも近くなった。その頃、地球は、現在よりも全体的に気温が 2-3度高く、「Greenland (グリーンランド)」も「The West Antarctic ice sheets (西南極氷床)」も融けていて、海水面は今よりも 10-20m上がっていた。

 この急激な CO2濃度の増加は、今後、予測できないほどの気候変動をもたらし、それは、地球の「ecological and economic disruption (生態系破壊と経済の破綻)」につながりかねないと見られている。

 さらに、不気味な現象は、大気中の CH4 (メタン)濃度も上昇していること。とくに、熱帯・亜熱帯地域における大気中のメタン濃度の増加率が高い 。
 London大学のカレッジ「Royal Holloway」の Euan Nisbet教授によると、このままメタン濃度の上昇が続くと、さらに温暖化を加速させ、それがまた「天然資源 (natural resources)」からのメタン湧出を誘発するという「vicious cycle (悪循環)」を招く恐れがあるという。

 地球いや人類は取り返しのつかない危機的な状況に立たされている。しかし、USは、毎年、世界の CO2全排出量の約 16%に当たる 54億トンを排出しているにもかかわらず、「Paris agreement (パリ協定)」に背を向け、そこからの脱退を表明している。それは「wilfull(だだ捏ね)」と言うものだろうに。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

ガン (呼吸器系) 死亡率:貧乏人と金持ちではその差300% (BBC-News, October 31, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/834/cpsprodpb/12448/production/_90142847_hi016651648.jpg

 ガン (cancers) の統計データは、日本でも、種目別、年齢別、性別などで分析されている。しかし、貧乏人と金持ちの違いでガンの罹患率、死亡率を調べた結果は、少なくとも日本では公表されていない。

 ところが、「NHS Health Scotland (スコットランド国民保健サービス)」が 2016年までの 10年間の医療データを解析した結果、貧富の「格差 (disparity)」によって、ガンの「罹患・死亡率 (incidence and death rates)」は極端に違うことが明らかになった。

 とくに、「trachea (気管)」、「bronchus (気管支)」、「lung (肺)」などの「respiratory system (呼吸器系)」に限ると、ガンの罹患率・死亡率のいずれも、「もっとも貧しい地域 (the most deprived area)」と「もっとも裕福な地域 (the most affluent area)」の差は 300%。
 ガン全体でも、2016年の貧困地域の死亡率は、もっとも裕福な地域に比べて 61%も高く、罹患率は27%高かった。

 2016年、Scotland (人口:542万人)においてガンが原因で死亡した人は 15,814人。種目別では肺ガンが多く、4,035人を占める。しかし、この10年間で見ると、喫煙率の低下傾向が反映されて、肺ガンの死亡率は男性で 23%減、女性で 6%減となっている。

 また、乳ガン、前立腺ガンの死亡率は、それぞれ 17%減、7%減と減少に転じた一方で、肝臓ガン、子宮ガンの死亡率が増加し、それぞれ 55%増、71%増の数値を示した。肝臓ガンの原因はアルコール摂取とB型、C型肝炎(hepatitis B and C infections)にあり、子宮ガンには、出生率 (fertility) の変化と肥満が関与しているとされる。

 なお、「Audit Scotland (スコットランド監査局)」がまとめ、この 10月26日に発表した「Report: NHS in Scotland 2017」でも、ScotlandはEngland, Walesなどと比べてガンの死亡率が高く、とくに貧困地域では際だっていることも明らかされている。

 さて、振り返って日本。一般に、ガンの発症リスク要因は喫煙、飲酒、塩分摂取などとされるが、ガン死亡率の高い地域は青森、北海道、秋田。いずれも冬の寒さが厳しい地方だ。
                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com

スーパーバグMRSA173種のゲノム特定:料金£120、1日で判明 (BBC-Health, October 26, 2017)

https://ichef-1.bbci.co.uk/news/834/cpsprodpb/13E31/production/_98475418_gettyimages-185071196.jpg

 「superbugs (スーパーバグ)」とは抗生物質の効かない耐性菌のこと。なかでも、世界中の病院で猛威を振るっているのが「MRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」。鼻の中や皮膚に付着していることが多い。薬用クリームや「antiseptic baths (殺菌バス)」で除菌することも可能だが、健康な人は、MRSAが検出されても、ほとんど「symptoms of infection (感染症状)」を示すことはない。

 しかし、体力が弱まった手術後の患者の傷口から、この MRSAが体内に侵入すると、肺炎や敗血症などの「life-threatening infections (命に関わる感染症)」を招く恐れがある。
 そのとき、侵入したMRSAは、本来、患者に付着していたものか、あるいは院内感染によって、それとも手術中に患者に侵入したものなのか。これを明確に判定することは難しいとされて来た。

 「The Wellcome Trust Sanger Institute」の Sharon Peacock 教授らの研究グループは、細菌 MRSAの「genetic sleuthing (ゲノム解析)」で、MRSAには 173種のタイプがあることを突き止めた。
 Peacock 教授らは、England 東部の 3 病院、7 医院から収集した「MRSA-positive patients(MRSA保菌患者)」1,465名の MRSA サンプルの「genome (全遺伝子情報, ゲノム)を「DNA sequencing (DNA塩基配列決定法)」によって解析し、その結果を医学雑誌「Science Translational Medicine」に発表した。

 この研究によって、個々の MRSAの「genetic genealogy (遺伝的系譜)」も、MRSAの感染経路も明確になるという。
 また、定期的な鼻腔内検査で、そこに付着した MRSAの DNA解析を実施すれば、細菌の「出芽 (bud)」段階で医療措置が可能となり、特定の耐性菌 MRSAに対する「more targeted, efficient and effective (もっと的を絞った、効率的かつ効果的)」な「infection control (感染対策)」にもつながる。

"Huge advances in DNA sequencing mean the whole genome of a bacterium can be worked out in a day for around £120."

[ DNA塩基配列決定法の飛躍的な進歩によって、およそ £120 (約18,000円) も掛ければ、細菌の全遺伝子情報を1日で解析できる。]

 これで、医者は、MRSA 院内感染を、患者のせいにすることはできなくなった。

 なお、この一編をまとめるに当たって、以下の記事も参考にした。

  CIDRAP, University of Minnesota
  "Genomic data may help reveal hidden MRSA outbreaks"

                   (写真は添付のBBC Newsから引用。)

www.bbc.com