酸化グラフィン膜で海水を淡水化:将来の水不足に備えて! (BBC-Science & Environment, April 3, 2017)
地球上には約14億km3の水がある。しかし、飲み水に利用できるのは、わずか 0.01%。国連の調査によると、2025年には世界の人口の 14% (12億人) が飲み水の不足 (water scarcity) に直面すると予想される。
人類はどうしても海水に水源を求めなければならない。ところが海水には約 3.5%の塩類が含まれていて、そのままではとても飲み水には向かない。
そこで、海水の淡水化技術 (desalination Technology) が必要になる。現在、ほとんどの淡水化プラントでは、「逆浸透膜 (reverse osmosis)」法が採用され、水の分子だけを通して、塩化物は通さないポリマー中空膜フィルターが使用されている。ただし、この方法で海水から真水を得るためには、大気圧の 50倍以上の圧力を掛ける必要がある。
この膜 (フィルター) にグラフィン (graphene) を利用する研究開発が進められている。
2004年、世界で初めて Manchester大学が、その分離に成功したグラフィンとは、
"Graphene comprises a single layer of carbon atoms arraged in a hexagonal lattice. Its unusual property, such as extraordinary tensile strength and electrical conductivity, have earmarked it as one of the most promising materials for future application."
[ グラフィンは、炭素原子が六方格子構造に並んだ単層シート。並外れた引張強度、導電率など特異な物理特性をもつことから、夢の素材としてその応用が期待されている。]
これまでは、「chemical vapour deposition, CVD (化学蒸着法)」などで作られてきた。
Manchester大学の Dr Rahl Nair らの研究グループは、多孔質の基板上で、単純な酸化処理 (simple oxidation) によって、「酸化グラフィン (graphene oxide)」を作成することに成功し、その研究の詳細を「Nature Nanotechnology」に発表した。
酸化グラフィンは、制作スケールの「scalability (拡張可能性)」、制作コスト面からも、単層グラフィンよりも利便性が高いという。
Dr Nair らが工夫した点は、酸化グラフィン膜の両面にエポキシ樹脂 (epoxy resin) を付着させ、水中で膜内の微孔が膨張しないようにしたこと。これで、フィルターの微細孔の大きさを正確に 1 nm (ナノメートル) に保てるようになり、水の分子は通過できるが、Nacl (salt molecules) は通過できない。なお、Naclは、水に溶けると、H2Oの分子を殻 (shell) のようにまとった形になる。
今後、この酸化グロフィンを実用化させるためには、中空フィルタ (capillaries) の耐久性 (durability)、塩類の付着性 (fouling)、海水に含まれる不純物 (微生物) の除去対策などの課題をクリアする必要がある。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)