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0.001秒間の宇宙の中の「自分」に気づく:そこに「心」あり (BBC-Travel, May 9, 2017)

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 刹那 (せつな) とは、指でパチンと弾く瞬間 (1禅指) の 1/65 の時間という。秒に換算すると、およそ 0.001秒か。禅の修行では、刹那せつなの注意力 (mindfulness) が大切とされる。
 さて、USA の禅の研究者 Paul Reps が、「無門関」などから禅の神髄に迫る話を拾い集めて、これを英文に翻訳し、1957年著書「Zen Flesh, Zen Bones」を出版した。その中に、幕末・明治の頃の名僧 渡辺南隠 (1834-1904) と天応恵倫との逸話が載っているという。
 
 天応 (てんおう) は、長年、厳しい禅の修行を積んだ和尚だった。あるとき、南隠 (なんいん) に会うことが叶(かな)い、その住まいを訪れた。あいにく、その日はひどい雨だった。天応が玄関先で傘を閉じ、履いてきた下駄を脱いで、座敷に上がった。
 南隠は、天応を迎えて、挨拶を交わした後、このように尋ねたと伝えられる。

"Did you leave your umbrella to the left or right of your clogs?"
[ ところで、おぬしは、傘を下駄の左に置かれたか、それとも右かな?] 

 天応は、この南隠の問いに答えることができず、自らの修行の至らなさを悟って、さらに6年の修行に励んだという。
 禅の心の置きどころは、時間が過ぎゆく中で、一瞬一瞬の「われ」に最大の注意(awareness) を払って、これに向き合うこと。

 

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 日本には、この極く一瞬の自然の輝き、出会い、思いを大切にする文化が「染みつい(ingrained)て来たと、BBC reporter の Mr Steve John Powell は語る。その背景の中で茶道や俳句が生まれ、一期一会として他人との出会いを大切にし、桜の花や月を愛でる心が育まれて来たと説明する。

"Present-moment awareness not only boosts stress resilience and well-being, but also lowers leves of anxiety and depression."
[ 今この一瞬に注意を集中することは、ストレス回復力や幸福感を高め、不安症、うつ病にも抑制効果がある。] 

 なお、JRが国鉄時代から採用している「指差し確認」または「指差喚呼 (checking and calling)」は、人間の作業ミスを防ぐ効果的な点検方法として、世界的に有名。

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 座禅の上達者は、心を空(くう)にしつつも、鋭敏に研ぎ澄まし、刻々流れる宇宙の気配に気を配っているのだろう。それは剣の極意に似ている。
               (写真は添い付のBBC Newsから引用。)

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