ヴィーナス、あなたのまつ毛はなぜ長いの?:虫を捕らえるためよ! (BBC-Science & Environment, January 22, 2016)
「Venus (ヴィーナス)」のまつ毛はカールし、長く美しい。まぶたは少しピンクに染まり、妖しく濡れる。そのヴィーナスは Venusでも、「Venus flytrap」、日本語名で「ハエトリグサ」のことだ。北米原産の食虫植物としてよく知られ、花屋さんでも容易に手に入る。
ハエトリグサの、虫を捕らえる「罠 (trap)」の仕組みは巧妙だ。
"Previous research had already shown that it takes two touches of the trigger hairs, within a 15-20 second time window, to cause the trap to shut. This saves the plant from wasting energy snapping at raindrops or other false alarms."
[ これまでの研究で、葉の内側に生えた「感覚毛 (trigger hairs)」に何かが触れ、その後15-20 秒内に、再度触れたときに葉が閉じることが分かっている。これは、葉の上に雨つぶが落ちたり、他の誤報で葉が動いて、エネルギーをむだに消費しないようにするためだ。]
ドイツ Würzburg 大学の Rainer Hedrich 教授らは、ハエトリグサが「獲物 (prey)」を捕まえると、植物細胞内にどのような変化が現われるかについて詳細に調べ、その研究結果を「The Current Biology」に発表した。
Hedrich 教授らは次のように説明する。
感覚毛が繰り返し刺激を受けると、その刺激は「インパルス (impulses)」となって細胞に伝えられ、獲物(昆虫)を溶かすための「ホルモン (hormones)」と消化酵素「ヒドロラーゼ (hydrolases)」の分泌が促される。これと平行して、細胞膜内では「ナトリウム・チャネル(sodium channel)」と呼ばれるタンパク質の濃度が急上昇する。
この繊細かつ複雑な「細胞機構 (cellular machinery)」の働きによって、ハエトリグサは捕まえた獲物を葉の中で溶かし、葉の内側の「特殊な粘膜 (special glands)」を通して、溶けた液中の「ナトリウムイオン (sodium ions)」を吸収し、栄養源としているのだ。
「Venus flytrap」の魅力は、その「まつ毛」だけではなかった。その進化した植物細胞の仕組みには、目を見張るものがあった。
小さなハエトリグサの葉の内側では、最先端の細胞化学が営まれていたのだ。
(写真は添付の BBC News から引用)