ノコギリエイをバリバリ食う:どう猛なオーストラリア海水ワニ (BBC-News, April 12, 2017)
野生生物 (wildlife) の世界では、時代劇や西部劇のように、悪人とヒーローとが明確に別れてはいない。自然は「predators (食うもの)」と「preys (食われるもの)」とが共存する、情け容赦のない苛酷な生態系だ。
その「predators (食うもの)」を単純に悪と決めつけるわけにはいかない。しかし「ワニ (crocodiles)」の貪欲さには辟易する。なにしろ、あの「冷たい目つき」がどうにも好きになれない。
話は、西オーストラリアの北部「Kimberly region (キンバリー地域)」に生息する「ノコギリエイ (sawfish)」。口元 (snout) がチェーンソーの刃のようにギザギザに伸びたエイの仲間だ。現在、個体数が減少し、ごく近い将来、絶滅の危険性が極めて高い「critical endangered species(絶滅危惧種1A類)」に分類されている。
その Kimberly region (キンバリー地域) の Fitzroy River (フィッツロイ川) の上流は、ノコギリエイの産卵域 (spawning area) になっていて、毎年、たくさんの稚魚 (snouts)が卵からかえる。そこでしばらく生息した後、juvenile (幼魚) となって海を目指し、川を下る。
ところが、これを Fitzroy River の下流域 (lower reaches) で待ち受けるのが、どう猛な「saltwater crocodiles (海水ワニ)」と「bull sharks (オオメジロザメ)」。
ノコギリエイは海に戻ると、体長 8mの巨大なエイに成長するが、その幼魚の時期、いくらノコギリの武器を振り回しても、ワニには到底、歯が立たない。
ようやくたどり着いた河口ながら、後、一歩のところで、あっけなくワニの餌食(preys)となってしまう。
Murdoch大学の David Morgan 准教授らの調査によると、捕獲したノコギリエイの幼魚39匹の内、約 60%に咬み傷 (bite marks) が見つかったという。
さらに、これまで、このノコギリエイの「ノコギリ」がデコレーションの贈り物として珍重されたことや、長いノコギリが災いとなり、漁網に引っかるなどで、個体数を減少させて来た。
今、オーストラリアでは、増え過ぎたワニが、減り過ぎたノコギリエイを食い荒らす光景が見られる。なんという壊れかけた生態系であろうか。
なお、Morgan 准教授らの研究の詳細は、科学雑誌「Ecology」に発表された。
(写真は添付のBBC Newsから引用。)