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感染症を砕く「免疫システム」:マクロファージに隠された秘密

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 今でこそ、ギリシャは経済危機に陥って、ヨーロッパの強国に比べて国の勢いは見劣りするが、ギリシャの歴史は古く、かっては古代文化の中心であった。

 そのためか、英語にはギリシャ語 (Greek) から派生した語が多い。「マクロファージ(macrophage)」も、その一つ。この語は「macro」と「phage」を組み合わせた言葉だ。その「macro」はギリシャ語「makros  (英語の large, long の意)」に由来し、今では、日本語としてもすっかり定着し、少しばかり気障(きざ)に、「マクロなものの見方」などと、口にする人もいる。
  次に、「phage」もギリシャ語「phagein (eat の意)」を語源とし、「食細胞」すなわち「bacteriophage (バクテリアを食べる細胞)」を意味する。つまり「macrophage」とは「とても大食の、バクテリアを食べる細胞」ということになる。しかし、これだけでは、何のことか、はっきりしない。

 さて、人間の血液は、体重の約 8 %を占める。その血液は、液体の血漿と細胞成分の赤血球、白血球、血小板から構成され、液体と細胞成分の比率は 55:45。
 医学でマクロファージと言えば、突起を持った白血球の一種で、アメーバのように血漿中を這い回り、生体内に侵入した細菌や死滅した細胞などを捕食し、消化してくれる細胞のこと。一言で言えば、体に悪い奴やゴミを片っ端から片付けてくれる自然免疫細胞だ。

 今、医学界で注目を浴びているのは、鳥類のマクロファージだ。
 鳥類の「糞 (fungus)」には、真菌「Cryptococcus neoformans (クリプトコッカス・ネオフォルマンス)」が生息し、これが土壌を汚染する。何らかの原因で、人間の体内にこの真菌が取り込まれると、「肺 (lungs)」や「中枢神経系(central nervous system)」が冒され、ときに「致命的な感染症 (fatal infection)」を発症する。世界で、この感染症で死亡する患者数は、毎年数十万人に上ると推定されている。

 ところが、鳥類は体内に、常にこの真菌を持っていながら、なぜか、人間のような感染症には罹らない。Sheffield 大学とBirmingham 大学の研究チームは、このなぞを追った。
 すると、
"Scientist at the University of Sheffield and the University of Birmingham found it can grow slowly within the bird's body the immune system immediately destroys it."

[ その真菌は、鳥類の消化管内で徐々に増殖するが、体の組織に侵入しようとすると、免疫システムによって即座に破壊されてしまうことがわかった。]

 鳥類は、人間よりも体温が高いことは事実。しかし、それだけで、真菌の増殖を抑え切れているとは考え難い。
 そこで、顕微鏡観察によって、白血球細胞を詳細に調べたところ、鳥類のマクロファージ細胞は、人間とはまったく異なる機能を有し、真菌の増殖を完璧にブロックする能力を備えていたという。

 研究者は、この、真菌に対する鳥類の優れた免疫システムが解明されるならば、人間の「免疫反応 (immune response)」が改善され、必ずや感染治療に役立つものと期待を脹らませる。なお、研究の詳細は科学雑誌「Scientific Report」最新号に発表された。

                                  (写真は添付の BBC News から引用)

www.bbc.com