かっては、澄み切った秋の空いっぱいに、あれほど赤トンボが群れ飛んでいたのに、近頃は、秋になっても、その姿を見かけることが少なくなった。
2019年の調査によると、個体数を劇的に減少させている地球上のトンボやカブトムシなどの昆虫は 40%に及び、動物、鳥類、爬虫類に比べて、生物種の減少スピードは 7倍。その一方で、皮肉なことに、ドンドン増え続けているのはイエバエとゴキブリとか。
その秋の季語でもあるトンボが、地球上に現われたのは、今から約3億年前。その後、たくさんの種(しゅ)に分化し、進化して来た。
この度、「The British Dragonfly Society (英国トンボ協会)」は、1970年から観察記録者 17,000人が収集した140万件のデータを整理、まとめて、報告書「State of Dragonflies 2021」として発表した。
なお、報告書では、BritainとIrelandで確認されるトンボ 46種とその仲間のイトトンボに関する生態アセスメントも実施している。
それによると、1995年から、トンボの種類が変わり始め、南ヨーロッパに生息するトンボが、北に移動してBritainでも見られるようになった。
その代表的なトンボに
・emperor dragonfly:コウテイギンヤンマ
・migrant hawker:マダラヤンマ
・ruddy darter:タイリクアカネ
・black-tailed skimmer:シオカラトンボの仲間
・small red-eyed damselfly:アカメイトトンボ
その一方で、姿を消したトンボは、UKの高地や寒冷地に生息するトンボの
・common hawker:ルリボシトンボ
・black darter:ムツアカネ
この 2種のトンボは、主な生息としていた泥炭地 (peatbogs)が減少し、さらに極度の干ばつが追い打ちを掛けて、姿を消したものと考えられるという。
それにしても、UK全土で確認されるトンボの種類が増えたことは、この数十年間で、地球温暖化が進んで、トンボが北へ北へと移動したことと、湿地帯
・ponds:池
・lakes:湖
・garabel-pits:砂利採取場
・reservoir:貯水池
が増えたことが影響していると、専門家は見る。
ただし、「conservation officer (自然保護官)」の Ms Eleanor Colverによると、
『今回の報告書は、トンボの生息地を確認しただけであり、その個体数の増減については触れていない。実際に、トンボは農薬、水質汚染、生息域の喪失などの影響をまともに受けて、個体数を激減させている』と、報告書の内容に疑問を投げかける。
おわりに:まるで妖精の世界のトンボかと見まちがうほど繊細な「damselflies (イトトンボ)」。それが、そこにとまっているのと、いないのでは、風景がまったく違う。自然は、いつまでも豊かであってほしい。
(写真は添付のBBC Newsから引用)