人前で話すことが苦手な人は多い。ところが、要領の得ないことをダラダラあるいはボソボソと話す人も、それに劣らず多い。
つまりは、スピーチが下手だとか、人前ではあがってしまい、思うように話せないなどといった心配は、まったく不要。ほとんど誰もが、話しべたなのだから。
日本の高校・大学では「public speaking」の科目がない。それに、授業・講義を担当する教員側も、本格的なトレーニングを受けていない。だから、国際会議の研究発表会場では、スピーチの力量の格差は歴然だ。つまらない「presentation」,「speech」に対して、学会は冷酷だ。容赦なく会場を退席する。
さて、RTEはスピーチのテクニックよりも、「Glossophobia (スピーチ恐怖症)」に焦点を当て、どうすれば、その恐怖心を取り除けるのかについて、以下に紹介している。
1.Practice, practice, practice:練習また練習、さらに練習
なりよりも、とにかく練習に練習を重ねること。これに尽きる。近くに「public speaking」のサークルがあったなら、それに加入して、仲間と一緒に励むこと。
これは、もう、合気道・剣道、卓球・テニスの練習と同じ。基本的な動作を何度も何度も繰り返して、その技を磨くことだ。自然に自信がつくようになる。
2.Try some calming techniques:心を落ち着かせるテクニック
さて、あなたは会場の前に進み出て、演台 (podium)に立つ。聴衆は一斉にあなたに目を向ける。こんなとき、心を落ち着かせてくれるのは、一枚のポートレイト。自分を励ましてくれる人の写真を、その演台の上に置き、一呼吸。これで、気分はずいぶんと楽になるはずだ。
次に、会場の中央付近の列に目を向け、その部屋の左端と右端の席の人に対して交互に向き合い、直接話しかけるようにスピーチを開始。すると、まるで会場の出席者全員に話しているように見えて、説得力が増す。
3.Prepare for succsess:成功を勝ち取るための準備
はじめは、「formal speech」に こだわるよりも、普段の話し方で、しかも、話す内容を箇条書きスタイルにまとめて、対話形式で話すと、無理のないスピーチとなる。
なお、スピーチに先立ち、夢中になって覚えた内容は、6倍うまく相手に伝えることができという。(必ず、スピーチの原稿と、大事な点を箇条書きにしたものを準備すること。)
4.And… breathe:そして、(一呼吸の)間をおく
緊張すると、どうしても呼吸が浅く、早くなるもの。会場の前に進むとき、大きく深呼吸する。これで、気持ちが楽になり、しっかりとした大きな声も出るようになる。(どんなに英語に自信があっても)ベラベラと立て続けに話すよりも、話の区切りで「間(ま)」を置く。普段、友達と話すスピードよりも、少しゆっくり話すようにすると、スピーチではちょうど良い早さになる。
なお、国際会議上で求められる基本的なスピーチ・ルールは
・Loudly:大きな声で
・Slowly:ゆっくりと (ただし、メリハリのある正しい英語で)
・Clearly:明確に
どんなに優れた研究内容も、このルールを欠いては、台無しだ。また、日本人特有の照れ笑いなど通用しない。
5.Manifest successs:マニフェスト成功術
心理学では、過去に成功した例を思い出して行動に役立てることを「マニフェステーション (manifestation)」と呼ぶ。これまで、うまく行った経験。それはいつ、どこで、どんなことをしていたときだっか。それで、どんな達成感を感じたか、などを思い浮かべる (visualisation)と、スピーチの恐怖感が薄れ、自身をもって話すことができるようになるという。
このマニフェスト・スピーチの練習を5分間、毎日2回続けてみよう。
6.Therapy:専門家の治療
それでもスピーチ恐怖症が改善しないときは、専門医の診断を受けること。恐怖心を和らげる「認知行動療法 CBT (Cognitive Behavioural Therapy)」がある。
おわりに:そうは言っても、人前で話す「public speaking」をマスターするのは至難の技だ。トレーニングにトレーニングを重ねること、また、これはと思うプロのスピーチを注意して聴き、すばらしい点、言い回し、所作などを自分のスピーチに取り入れること。
なお、スピーチの上達を望む方には、次の一冊を勧める。
・Larry King: How to Talk to Anyone, Anytime, Anywhere; The Secrets of Good Communication, Three Rivers Press, 1994
(写真は添付のRTE Newsから引用)