古代ローマ帝国が衰退の一途をたどり始めると、その機に乗じて世界に乗り出し、人々を恐怖におとしいれたのは、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなどの北方のスカンジナビア人の海賊集団「Viking (ヴァイキング)」だった。
870年頃、Vikingが得意の造船･航海術を駆使して、近隣の Greenland、Faeroes Islands (フェロー諸島)、Icelandなどの「North Atlantic Islands (北大西洋の島々)」を次々に発見、攻略すると、それらの島々を根城にして、さらにヨーロッパ大陸沿岸に沿って南下し、略奪と破壊、人殺し、人身売買を重ね、悪事の限りを尽くした。沿岸に上陸すると、それまでの集落を植民地化 (colonisation)し、Vikingの多くがその地に住み着いた (Viking settlement)。
Vikingが他国の土地に攻め入って、これを占拠すると、真っ先に開始するのは「deforestation (森林伐採)」だった。お陰で、Greenland、Iceland、Irelandから森林が消失した。とくにGreenlandはひどかった。Vikingは、木々の姿が消えて住心地が悪くなると、Geenlandをさっさと見限った。
Irelandも Vikingの侵略を受けた。VikingがDublin, Cork, Waterfordなどの沿岸部に住み着くと、各地に「town (タウン)」をつくり、そこに、全国から食糧、水、建築･工芸資材、薪 (firewood)など運び込ませた。
この「Viking settlement (ヴァイキングの入植化)」戦略は､「town」と､「town」あるいは遠方諸国との交易を盛んにしたが、その一方で、積荷に紛れた外来種植物のタネや昆虫を、ヨーロッパの Vikingが支配する地にバラまくことにもなった。
結局、Vikingが侵略し、植民地化し、その地に定住することによって
・transformation of local habitat：それまでの居住環境はガラリと変わり
・alternation of ecosystem：それまでの生態系が壊れ
・consumption of materials and resources；資源物資の消費が急増し
・production of waste：ゴミの排出量が増大
したばかりか、Vaikingが入植地に持ち込んだ家畜 (domestic animls)と穀物 (crops)は、地形も自然そのものも「far-reaching effects (計り知れないほど広範囲に影響)」を受けたのだ。
さて、人類は「洪積世後期 (late Pleistocene)」(約12,000年前) 頃から、狩猟採集(hunting & foraging)、開墾 (land clearing)、農業 (agriculture)に取り組み、その活動によって、この太陽系第3惑星 地球に少なからず影響を与えてきた。そして、1760年代に産業革命が始まると、石炭が大量に掘り出されて消費され、大気･環境汚染の時代に突入する。
このように、人類の活動が地球の地形や生態系に大きな変化を与えるようになった地質時代は､「Anthropocene (人新世)」と呼ばれる。1995年にノーベル化学賞を授賞したオランダの大気化学者 Pau Crutzen (ポール･クルッチェン教授 [1933-2021]) が、USのEugene Stoermer (ユージン･ストーマー教授 [1954-2012]) とともに提唱した、地質年代を区分する新語だった。
Vikingの活動が物資の交易の発展に寄与したとする見方もあるが、そんなことは些末なことだ。むしろ、生態系の破壊に加担し、これを加速させたと捉えるべきだと、考える。
おわりに：過去は過去、現在は現在だ。Vikingの殺戮･略奪の罪を過去にさかのぼって非難することはできない。しかし、それまで平和に暮らしていた、何の罪もない老若男女(ろうにゃうなんにょ)が、突然現われた Vikingに殺され、奴隷として異国に売られ、財産も土地も奪われたことは隠しようがない事実だ。そして、かれら海賊は、地球の生態系、環境まで変えたのだ。
それでも、あなたは Vikingが好きですか。
(写真は添付のRTE Newsから引用)
